トップ国際会議に論文を書こう

  • 福田 健
N/ACitations
Citations of this article
7Readers
Mendeley users who have this article in their library.

Abstract

幸い,優秀な共同研究者や学生さんたちに恵まれたお かげで,幾つかのトップ国際会議に論文が採録され,こ れらの会議の査読や運営側の仕事をたまにお手伝いして います.しかし,筆者もこの分野の全容を理解している わけでなく,この原稿を書くには力不足ですので,その 辺を差し引いて残りの原稿をお読み下さい.また,筆者 の専門領域(ネットワーク計測・解析・セキュリティ) のバイアスが入っていることを御理解下さい. 原稿執筆にあたりネットワーク分野の大学院生が トップ国際会議に論文を出すことの意義を知り合いの研 究者たちと議論しました.その結果, 「海外の研究大学 の大学院生は,トップ国際会議に論文を出すことを目標 にしているけれど,日本では必ずしもそうでもないので は」という話になりました.米国では,大学院生がトッ プ国際会議で発表すれば,最初の職を得るにあたって大 き な メ リ ッ ト と な り ま す. 会 場 に は 企 業(Google, Microsoft, Facebook)や大学の有力研究者が参加して いますから,ここで目に留まれば,就職のチャンスが大 きくなります.セッションチェアが,登壇者を紹介する 際に「求職中である」と一言添えるシーンをたびたび目 にします.国内のネットワーク分野では,今のところ トップ国際会議論文がそのまま就職の有力な手段となっ ているかどうか分かりませんが,ほかの分野を見ると, トップ国際会議の論文採録経験を優遇するような求人が Twitter 等で話題になっています.ですから,国内の ネットワーク分野でも,研究職のグローバル化に伴い, 早晩,トップ国際会議への論文の採択が研究者のキャリ アアップに大きく影響するようになるのではないでしょ うか. (そうならないと優秀な研究者の確保が困難にな りそうです. ) 逆に論文の投稿を目指さない理由として,そもそも雲 の上の世界の話で自分には関係ないという意見や,ニッ チな研究トピックで,最初からそのような会議に論文を 出す意味を見いだせないという意見はあるでしょう.ま た,採択率 20%程度で論文が不採録になる可能性が高 いのであれば 3 年で学位が取れない,手厳しい査読コメ ントに精神的に耐えられないなどの意見もあるでしょう. 筆者自身がトップ国際会議に論文を投稿するのは, せっかく書いた論文を査読者以外にも読んでもらいたい という理由が大きいです.現状,山のように国際会議が 開催されています.検索技術の発展で,本当に良い論文 ならどのような会議や雑誌に掲載されたとしても読んで もらえるという意見は否定しませんが,筆者自身がタイ トル・アブストラクトに目を通しているネットワーク系 の 国 際 会 議 は,SIGCOMM, CoNEXT, IMC, NSDI, INFOCOM(関連分野のみ) ,HotNets で,後は専門分 野に特化した会議(PAM, TMA, etc)ですから,自分 ではそれ以上追い切れません. (もちろん論文執筆時に はほかにもいろいろ調べます. ) トップ国際会議の定義は人によって違うと思います. 2009 年と少し古いですが,あるブログのポストに著名 な 先 生 方 が コ メ ン ト を 残 し て い て 参 考 に な り ま す (http://mybiasedcoin.blogspot.jp/2009/10/ranking-networking-conferences.html) .大雑把にまとめると, トップ国際会議の基準として,シングルトラック,採択 率が低い,分野に偏りがない,発表関係者以外の聴衆が た く さ ん い る, な ど の 理 由 が 挙 げ ら れ て い ま す. INFOCOM もネットワークの理論寄りのトップ国際会 議ですが,マルチトラックで聴講が大変,採択数が多い と倍率が低くても玉石混交という意見はなるほどと思い ました.ただ,INFOCOM は最近ダブルブラインドの 査読や査読者の表彰など,査読の質の向上を図っていま す.またシステム寄りであれば NSDI, モバイルであれ ば Mobicom,計測であれば IMC と人によってトップ 国際会議の定義が違うのはそのとおりだと思います. 以下では,これらの中でこれまで筆者が多少なりとも 222 通信ソサイエティマガジン No.40 春号 2017 ⓒ電子情報通信学会 2017 解 説 トップ国際会議に論文を書こう ── ACM SIGCOMM, CoNEXT, IMC ── 福田健介 Kensuke Fukuda 国立情報学研究所/総合研究大学院大学

Cite

CITATION STYLE

APA

福田健介. (2017). トップ国際会議に論文を書こう. 電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン, 10(4), 222–226. Retrieved from https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/10/4/10_222/_article/-char/ja/

Register to see more suggestions

Mendeley helps you to discover research relevant for your work.

Already have an account?

Save time finding and organizing research with Mendeley

Sign up for free