支援枠組みにおいて専門職が用いる人間関係形成方法とそのプロセス ―保健師による地域の仕組みづくりに焦点をあてて―

  • 原田 春
  • 小西 美
  • 寺岡 佐
  • et al.
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原 田 春 美 小 西 美智子 県立広島大学保健福祉学部 岐阜県立看護大学 寺 岡 佐 和 浦 光 博 九州大学大学院医学研究院 広島大学大学院総合科学研究科 要 約 本研究の目的は,支援という枠組みにおける支援者と被支援者との相互作用において専門職支援者が用い た人間関係形成の方法と,その関係形成のプロセスを明らかにすること,さらに,それらを踏まえて,地域 の支援の仕組みの望ましい形を提示することである。対象とした支援場面は地域の仕組みづくりであり,そ こでの専門職支援者は保健師,被支援者は地域住民とした。データ収集は,市町村に所属する保健師 20 名 を対象として,半構成的面接法を用いて行った。分析は, 面接内容の逐語録をデータとし,Modified Grounded Theory Approach を用いて質的・帰納的に行った。分析の結果抽出された 37 の概念から, 【関係づくり前】 【内向きの関係づくり】 【外向きの関係づくり】 【関係の維持と新たな関係開発】 【形成された関係の評価】と いう 5 つのカテゴリが生成された。ここでの相互作用は,保健師と住民,住民と住民,住民と行政組織や専 門職・専門機関等の他者,保健師と他者との関係形成が図られる中で,住民や地域社会の課題を解決するた めの地域の仕組みを構築しようとする過程であった。また,当初は支援者である保健師が中心となって行っ ていたことも,関係が形成される中で住民中心へと変化する等,住民をエンパワメントする過程でもあった といえる。人間関係形成と,その形成過程の中で行われる課題解決,住民のエンパワメント,それらの経験 の蓄積は,いずれも円環的に結ばれていたと考えられる。 キーワード:専門職支援,支援の仕組み,相互作用の過程,保健師,住民 はじめに 戦前の地域社会における相互扶助の機能は,戦後の高 度経済成長と産業構造の変化,さらにはそれらに伴う対 人関係の希薄化によって弱体化してきたように思われ る。それは,民主的で自由な社会を求める人々が,相互 扶助の背後にある相互監視やその維持に対する強い社会 的圧力,異質性や変化を容認しない排他的で閉鎖的な環 境を窮屈として嫌った結果(浦,2005)でもある。一方 で,少子高齢化社会の到来と地域保健医療福祉の推進, ノーマライゼーションの理念の浸透に伴って,地域で暮 らすようになった多様な課題を持つ人々を社会で支える ことが必要と考えられるようになった。そして,それは 身分制度を背景とし,支援者と被支援者とが明白であっ た戦前の地域共同体の再構築ではなく,制度化という方 向へ進んだ。自分たちの生活問題の解決を制度やその制 度の下にある専門機関に任せようとしてきたのである。 昨今も 2000 年の介護保険法施行(2006 年改正) ,2002 年 の健康増進法制定,2003 年の次世代育成支援対策推進法 制定,2006 年の障害者自立支援法施行,2008 年の高齢 者の医療の確保に関する法律施行等,新たな制度の成立 や改正が続いている。

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原田春美, 小西美智子, 寺岡佐和, & 浦光博. (2011). 支援枠組みにおいて専門職が用いる人間関係形成方法とそのプロセス ―保健師による地域の仕組みづくりに焦点をあてて―. 実験社会心理学研究, 50(2), 168–181.

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