日本の防災対策は「想定」を前提とした訓練,ハザードマップ,防災教育や災害時の情報伝達などの手段で避難を促すというソフト対策に過度に重点が置かれている. 結果,ありとあらゆるところに想定を設け,それにのっとって対策を整えるという「想定主義」に陥っている.そして避難についても,現実的な解を見つけるというより「原則車避難禁止」「危機意識をもって急いで逃げれば被災は回避できる」といった避難の課題を人々の防災意識に帰結する「精神主義」が跋扈している.また,あらゆる災害対策の前提となる被災の原因の検証についても,メディアで言われていることや思い込みで仮説を構築し,そこから改善策を検討・導出してしまう「仮説主義」に陥っている.だが,実際に調査検証が進むに従って,そもそも仮説自体が誤っているといったことが多くみられる. これら日本の防災対策の問題点は東日本大震災を踏まえても何も変わっていない.「想定」を重視するのではなく行動の規範を考えること,精神論だけを強調するのではなくハード対策とソフト対策のバランスという原点に立ち返ること,メディアの論調や思い込みではなく,予断を持たず,徹底的に東日本大震災の被災の現実に,科学的実証的に向き合うことが求められる.
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関谷直也. (2012). 東日本大震災における「避難」の諸問題にみる日本の防災対策の陥穽. 土木学会論文集F6(安全問題), 68(2), I_1-I_11. Retrieved from http://ci.nii.ac.jp/naid/130004560130/
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