functional somatic syndrome (独)桑名市総合医療センターリウマチ膠原病内科 松 本 美富士 要 旨 本邦の多くのリウマチ医は線維筋痛症(fribromyalgia; FM)の病名の認識はあるが,疾患の存 在に否定的であり,診療に対して拒否的である.最近の脳科学の目覚ましい進歩を背景に,非侵害 受容性疼痛,特に慢性疼痛の分子機序,脳内ネットワークの解明などから,FM の疼痛も脳科学か ら解明されつつある.また,本邦では2003年から厚生労働省の研究班が組織され,疫学調査,病因・ 病態研究,診断基準,治療・ケア,診療体制の確立,ならびに診療ガイドラインの作成など精力的 にプロジェクト研究が行われ,疾患の全体像がかなり具体的に見えてきた.その中で,特筆すべき ことは FM の疼痛を,他の慢性疼痛と同様にアロディニアを伴う痛みの中枢性感作によるものと説 明し得ること,この現象に脳内ミクログリアの活性化が認められ,いわゆる脳内神経炎症 (neuroinflammation)の概念で説明できる可能性である.これら所見は近未来的な病態発症機構 を標的とした画期的治療法の開につながるものであり,今後のさらなる発展が多い期待されるとこ ろである.病態以外にも厚労省研究班で得られた知見を中心に解説し,また Evidence Based Med-icine (EBM)手法を用いて厚労省研究班と学会が合同で作成した,診断,治療・ケアについてのガイ ドラインも概説した. は じ め に 本 邦 の 多 く の リ ウ マ チ 医 は 線 維 筋 痛 症 (fribromyalgia; FM)の疾患名の認識あるもの の,診断・診療に否定的,拒否的な状況にある. しかし, 2003年から厚生労働省調査研究班により 疫学調査,病因・病態研究,診断基準,治療・ケ ア,診療体制の確立,ならびに診療ガイドライン の作成など精力的にプロジェクト研究が行われ, 疾患の全体像がかなり具体的に見えてきた. これ ら成果を背景に, リウマチ医がポジティブに FM Update of fibromyalgia; A syndrome in search of pathogenesis and therapy.
CITATION STYLE
Matsumoto, Y. (2015). 線維筋痛症:病因・病態の進歩と治療の現状. 臨床リウマチ, 27, 239–252. Retrieved from https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/27/4/27_239/_pdf
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