多くの橋本脳症の患者がgive-way weakness や解剖学的には説明しづらい異常感覚を呈し ていることをわれわれは見出した。それらは身体表現性障害(いわゆるヒステリー)で特徴的と される身体症状に類似しており,脳梗塞のような局所的な障害で引き起こされる症状とは切り 離されて考えられてきた。そのような神経症候が出現するためには,びまん性,多巣性に濃淡 を持った微小病変を蓄積させることができる自己免疫性脳症のような病態を想定する必要があ る。このような考え方で,われわれは⽛びまん性脳障害による神経症候⽜という新しい診断概念 に到達し,実臨床では多くの患者を見出している。今回,抗ガングリオニックアセチルコリン受 容体抗体関連脳症,子宮頸がんワクチン接種後に発生した脳症,またはスティッフ・パーソン症 候群でも同様の症候がみられることを報告する。自己免疫性脳症の臨床では,抗体の存在だけ でなく,自己免疫性脳症による⽛びまん性脳障害⽜という概念が重要であり,この新しい診断概 念を用いることで診断が困難な自己免疫性脳症の軽症例であっても容易に診断が可能となる。
CITATION STYLE
牧美充, & 髙嶋博. (2017). 自己免疫性脳症のスペクトラムとびまん性脳障害の神経症候学. BRAIN and NERVE, 69(10), 1131–1141.
Mendeley helps you to discover research relevant for your work.