本研究では,A社の協力のもと,社員を対象に,様々な行動経済学的特性に関する質問を含んだ独自調査を行い, その個票とA社より提供を受けた残業時間に関するデータと組み合わせて,長時間労働者の特性を明らかにする. また,A社で導入された,残業時間上限目標を月 45 時間とし,働く時間と場所を自由に選べるという新たな人事 制度の政策評価も行う.分析の結果,いくつかの行動経済学的特性と残業時間は統計的に有意な関係が観察された. 例えば,時間選好の特性では,後回し傾向がある人の深夜残業時間が長い.社会的選好の特性では,平等主義者の 総残業時間が長い.ビッグ5の性格特性では,誠実性が高い人の深夜残業時間は短いが,総残業時間は長い.一方, 新人事制度の導入は残業時間を有意に削減した.特に,導入以前において月 45 時間以上働いていた人への残業削 減効果が大きかった.
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黒川博文, 佐々木周作, & 大竹文雄. (2017). 長時間労働者の特性と働き方改革の効果. 行動経済学, 10, 50–66.
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