この論文の目的は,大学生の奨学金問題を検討することである。 奨学金利用者の数は,1990年代後半以降に急増した。1990年代半ばまで,奨学金利用者の比率は全大学生の20%ほどであった。その後,2012年には全大学生の52.5%に達した。 奨学金利用者の増加は,1990年代以降の4 年制大学への進学率の上昇を背景としている。女性の短大進学者が減り,高卒の就職者数も減少した。民間企業労働者の平均年収と世帯所得は,2000年~2010年にかけて急激に減少した。 近年の奨学金制度の変化も,奨学金をめぐる社会状況に大きな影響をもたらした。1984年の日本育英会法の改定によって,有利子の貸与型奨学金が創設された。有利子の貸与型奨学金の増加に拍車をかけたのが,1999年4 月の「きぼう21プラン」であった。2004年に日本育英会は廃止され,日本学生支援機構への組織改編が行われた。日本学生支援機構は,奨学金制度を「金融事業」と位置づけ,その中身をさらに変えていった。 この奨学金制度は,1990年代後半からの4 年制大学進学率の上昇に貢献したことは間違いない。しかし,この有利子を中心とする奨学金制度の拡充は,奨学金返済の困難という問題をもたらしている。 現在の奨学金制度には改善すべき課題が存在している。第一に奨学金返還の困難を解決することである。第二に貸与型中心の制度から給付型中心の制度へと変えることである。
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OUCHI, H. (2015). The Issue of University Student Scholarships. The Journal of Educational Sociology, 96(0), 69–86. https://doi.org/10.11151/eds.96.69
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