Abstract
53 はじめに エピジェネティクスは DNA塩基配列自体の変化を伴 わず,細胞分裂後も継承される核内変化 と捉えることが できる.この約30年のDNA修飾・ヒストン修飾・クロマ チン構造変化・核内三次元構造などのエピジェネティクス 研究により,DNAからタンパク質への 一方通行の流れ を表したセントラルドクマは,多様で柔軟性のある 遺伝 情報と表現型の双方向性 を表す分子システムへと変貌を 遂げた. エピジェネティクスにより,獲得形質の世代を超えた継 承例が見つかるとともに,ゲノム的には全く同一な一卵性 双生児の性格や健康状態の違いなど,従来の遺伝学では説 明できない現象が説明できるようになりつつある.中でも 遺伝子発現の分子メカニズム解明に,エピジェネティクス の概念が導入されることで,研究手法そのものが大きく変 わってきた. 従来研究では,環境刺激や分化誘導により,表現型に 大きく変化が起こった時に,その前後で遺伝子発現を比 較してきた.例えば,変化前と変化後の細胞・組織・器 官を集めてきてmRNAを抽出しライブラリーを構築し て,RNA-seqにかけてupregulation(発現が上昇した)や downregulation(発現が減少した)遺伝子群を比較解析する 手法である.しかし,生命現象の解明には時間軸を考慮す ることが重要である.例えば,変化後の状態と比較する 変 化前 という状態は,1分前・1時間前・1日前・1週間前で も異なる.また,生物は将来を予測して,プログラミング された遺伝子発現に従って,成長・分化していく場合もあ る.生物は周囲の環境から,絶えず刺激と影響を受け続け ており,その反応は表現型として現れずとも,潜在的に生 体内で蓄積されている可能性が高い. この表現型が現れない,つまり遺伝子発現を伴なわない, 細胞核内で起こる潜在的分子メカニズムが エピジェネテ ィック・プライミング である. 最初の報告は,様々な血球系細胞に分化する造血幹細 胞(hematopoietic stem cell)の研究によってもたらされた. 造血幹細胞から赤血球系造血細胞(erythroid cell)に分化す るときに,グロブリン遺伝子の急激な発現上昇がみられる. ところが,その分化前(遺伝子発現上昇前)の造血幹細胞 PLANT MORPHOLOGY vol. 32 pp. 53-57 INVITED REVIEW
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Matsunaga, S. (2020). Plant regeneration by epigenetic priming. PLANT MORPHOLOGY, 32(1), 53–57. https://doi.org/10.5685/plmorphol.32.53
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