Abstract
1 .はじめに 近年, 透明導電膜や光触媒, 水分解電極, 太陽電池など様々 な分野で応用されている酸化物は,金属の種類とその価数に よって性質が大きく異なっている。こうした酸化物を基板に 成膜する際,結晶形態 (粒径や成長方位,露出結晶面など) を 制御できれば,元素組成や結晶構造に由来する物質本来の性 質に加えて,結晶形態に基づく性質も付与することができ, デバイス機能の向上につながる。例えば同じ粒径と成長方位 をもつ結晶粒子であっても,露出結晶面が変わると表面形状 や表面の原子配列が変化する。図 1 に示すように, 〈100〉成 長方位をもつ立方晶-亜酸化銅 (Cu O) を成膜した場合,露出 結晶面が {100} のときの表面形状は平面型に,{111} のとき はピラミッド型になり,これに伴って表面積や光透過性が変 化する。また,それぞれの結晶面の原子配列も異なるため (図 1) ,極性の有無や原子間距離,原子密度等が変化する。 このように,同じ酸化物であっても表面形状や原子配列が異 なると物理物性や化学物性が変化するため,用途に応じて最 適な結晶形態にすることが肝要となる。 酸化物膜を得るための種々の成膜法が存在するが,結晶形 態制御の観点からみると,結晶成長場が平衡状態に近く,比 較的大きな結晶粒径と明瞭な結晶面 (ファセット) が得られや すい水溶液結晶成長プロセスが理想的と言える。本稿では代 表 的 な 酸 化 物 半 導 体 で あ る 酸 化 亜 鉛 (ZnO) と 亜 酸 化 銅 (Cu O) の結晶形態制御について,水溶液電解析出法 (二極式 定電流電解) を用いた著者らの取り組みを紹介する。 2 .酸化亜鉛 (ZnO) の結晶形態制御 ZnO は六方晶ウルツ鉱構造を有する n 型半導体であり (図 2) , 高い可視光透過性や室温紫外発光性,大きな電子移動度など 有用な性質を併せ持つため,透明電子輸送電極や紫外発光素 子,化学センサーなどに応用されている。ZnO の水溶液電 解析出法は,伊﨑ら 及び Lincot ら によって 1996 年に報 告されており,硝酸亜鉛水溶液と塩化亜鉛水溶液がそれぞれ 電解液として利用されている。本研究では,図 3 に示すよう な二極式セルを用い,硝酸亜鉛水溶液 (75 ℃) の定電流電解 により F:SnO 膜付き導電性ガラス (FTO) 基板上に ZnO を成 膜した。提案されている析出メカニズムを以下に示す 。 酸化物めっきの結晶形態制御 品 川 勉 a a (地独) 大阪市立工業研究所 電子材料研究部 (〒 536-8553 大阪府大阪市城東区森之宮 1-6-50) 図 1 立方晶 Cu O の結晶粒子モデルと原子配列の模式図 図 2 (a) 六方晶ウルツ鉱構造 ZnO と (b) その主要結晶面
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SHINAGAWA, T. (2016). Morphology-controlled Electrocrystallization of Oxides. Journal of the Surface Finishing Society of Japan, 67(4), 197–201. https://doi.org/10.4139/sfj.67.197
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