目的 近年の身体活動支援環境に関する研究成果より、地方よりも都市部の住民の身体活動レベルが高いと予想されるが、これを実証するデータは乏しい。そこで、国民健康・栄養調査のデータを用い、都市規模による1日の歩数の違いを比較検討した。方法 2006-2010年の国民健康・栄養調査における歩数計を用いた1日歩数調査に協力した20歳以上の男性15,763人、女性18,479人を対象とした。5年分のデータを統合し、男女別に、歩数を都市規模間で(以下、市郡番号1;12大都市・23特別区、2;人口15万人以上の市、3;人口5万人以上15万人未満の市、4;人口5万人未満の市、5;町・村)年齢調整の上、共分散分析および多重比較検定を行い、さらに傾向性検定を行った。年齢区分あるいは仕事の有無による層別解析も行った。統計法に基づき本データを入手し、研究実施に当たり、東京医科大学の医学倫理委員会の承認を得た。結果 年齢調整した1日当たりの歩数は、男性は市郡番号1では7,494±4,429歩(平均±標準偏差)、市郡番号2では7,407±4,428歩、市郡番号3では7,206±4,428歩、市郡番号4では6,911±4,428歩、市郡番号5では6,715±4,429歩で、都市規模により有意に異なった(P<0.001)。女性は、都市規模が大きい順に、6,767±3,648歩、6,386±3,647歩、6,062±3,646歩、6,069±3,649歩、6,070±3,649歩で、男性と同様に都市規模により有意に異なった(P<0.001)。傾向性検定の結果、男女とも都市規模が大きいほど平均歩数が多かった(P for trend<0.001)。層別解析の結果、男女ともに年齢区分、仕事の有無によらず平均歩数は都市規模により有意に異なった。多重比較検定では、仕事のない男性、65歳以上の男性および女性では都市規模が小さい市群番号3、4、5の居住者間で平均歩数に差は認められず、仕事のある男性における、都市規模が小さくなるに従って歩数が減少するパターンとは異なっていた。結論 男女ともに、年齢調整後も都市規模により歩数は異なり、人口が多い都市の住民ほど人口が少ない都市の住民より歩数が多かった。また、都市人口の規模と歩数の関係は性別、年齢層や仕事の有無といった対象者の特性により異なった。
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井原正裕,高宮朋子,大谷由美子,小田切優子,福島教照,林俊夫,菊池宏幸,佐藤弘樹,下光輝一井上茂. (2016). 都市規模による歩数の違い:国民健康・栄養調査 2006-2010年のデータを用いた横断研究. 日本公衆衛生誌, 63(9), 549–559. https://doi.org/10.11236/jph.63.9_549
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