Abstract
農耕の歴史において,野生植物を人間が何世代にもわ たって播種,栽培,収穫することが淘汰圧となって植物 に脱粒性や休眠性が失われるなどの遺伝学的な変化が引 き起こされている.これを栽培化(domestication)とい う(中尾 1966,Harlan 1975,Meyer and Purugganan 2013). 同時に,農耕を始めることにより人間の側にも移動生活 から定住生活やがては文明が起こるという大きな変化が 生まれており,我々,人間が作物に飼いならされている のだという見解もある(Harari 2015). 人類が作物を栽培する過程で,自然にないような色や 形を持つ品種が生まれ維持されている.この中である種 の形質を持つ品種にはなにがしかの文化的な意味が与え られる.本稿で取り上げる穀類のモチ性などはその典型 であり,例えば,モチイネから作られる餅は日本人にとっ てはハレの日の食事であり正月などめでたい席での食事 とされ,日本人の精神世界とも大きく結びついていると 言える.このような事例はアジア諸国でも見られるもの である(阪本 1989,渡部・深澤 1998).また,さらに幅 広く文化史的な枠組みでとらえれば,中国南部から西日 本へと連なる「照葉樹林文化」の一要素としてとらえる こともできる(佐々木 1982,阪本 1989).
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Fukunaga, K. (2019). Origin of waxy cereals from a genetic point of view: From cultural history to genetic history of waxy cereals. Breeding Research, 21(1), 1–10. https://doi.org/10.1270/jsbbr.18j12
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