Platinum Group Metals (PGM) は,Pt,Pd,Rh,Ru,Ir,Os の 6 元素を総称したものである。さらに,これらに Au と Ag を加え て一般的に貴金属と称する。PGM は自然界の存在量が少なく鉱 石品位が他の資源よりも低い上,鉱床が地中深くまで貫入してお り,大部分が人力による手作業の採掘が行なわれている。このた め,鉱石の採掘にコストを要し,さらに回収や精製に複雑なプロ セスが必要なため,資源量に対して極度に生産量が少ない。この ため当面は資源枯渇の心配が少ない。しかし,PGM は単独に産 出されることは殆ど無く,かつ埋蔵量の大半が南アフリカに偏在 していることから, 将来的に安定な供給がなされるか懸念される。 Table 1 に 2011 年の PGM の供給量と用途ごとの需要 1) を示す。 Rh は供給量が年間約 24 トンである。Rh の主産地は南アフリカ であり年間約 20 トンと大半を占める。次いでロシアが約 2 トン となっている。加えてリサイクルによって年間約 9 トンの Rh が 生産されている。Rh の主用途は自動車用触媒であり,世界の Rh 需要量の約 80% が自動車用触媒に使われている。 Ru の供給量に関してはデータがほとんど見当たらないが,南 アフリカでの生産量が年間約 25 トンとの情報があり 2) ,Rh と同 じ傾向を示すと推定される。Ru の主用途は電気・電子工業製品 向けであり,ハードディスクドライブ等の電子機器に主に使用さ れている。世界の Ru 需要量は約 25 トンであり,Rh 需要量とほ ぼ同規模である。 PGM は多くの特性を有することから,工業的に重要でありそ の需要は多い。 今後も工業向けに需要が伸びることが予想される。 そのため,工場から排出される廃棄物および使用済み製品に含ま れる PGM 量も増加すると予想され,今後さらに PGM を回収す ることの重要性が増すと考えられる。廃棄物等から PGM を回収 することにより,資源の偏在による供給不安のリスクを低減する 効果が期待される。特に Rh と Ru は,Pt や Pd に比べて生産量が 少なく,また,その用途が宝飾や投資向けへの割合が低く,大半 が工業用途であるので,工場から排出される廃棄物からの回収が 効率的である。銅製錬をはじめとする非鉄製錬業では,電解製錬 におけるアノードスライム (殿物) 中に貴金属が濃縮されること から,従来より,Ag,Au,Pt,Pd などの貴金属が回収されている。 しかし,Rh と Ru に関しては,現状では効率的に回収されてい るとは言えない。 本報では Rh ならびに Ru の化学的性質を概説し,それらの分 離と精製に関する既存技術について検討している。 2.Rh と Ru の化学的性質と反応 2・1 PGM の性質 Table 2 に貴金属元素の融点 3) を示す。PGM の融点は Au や Ag に比べて高く,Rh と Ru の融点はそれぞれ 2233K,2523K で ある。このため,Rh と Ru の精製は,一般的に湿式法で行われ ている。 Table 3 に貴金属の酸化還元電位 (E o) 4) を示す。Rh と Ru は, 酸化還元電位が Pt,Au および Ag に比べて低いため,貴金属の 特徴である貴な性質が弱く,溶液から還元されにくい。また, Ir,Ru,Rh および Os は,Pt や Pd よりも溶解速度が小さく,不 溶性の PGM と分類される。Ru と Rh の分離には,これらの性質 の違いが利用される。 2・2 PGM のクロロ錯体 PGM は他の遷移金属と同様に, 多くの配位子と錯体を形成する。 永 井 燈 文 1 柴 田 悦 郎 2 中 村 崇 3 Platinum group metals (PGMs), such as rhodium (Rh) and ruthenium (Ru), are rare and unevenly distributed in the earth's crust. They are used in automobile catalytic converters and electronic equipment. The consumption of such rare resources is unsustainable; therefore, recycling technologies are needed. In this paper, the chemical properties and separation/recovery of Rh and Ru, and PGM smelting/refining technologies are reviewed. In PGM refining processes, Rh and Ru are converted into chloride complexes. To effectively separate each metal, operating conditions of the reaction have to be optimized. The valences of PGM chloro-complexes change with redox potential, and the distributions between chloro-and aquo-complexes vary with chloride ion concentration. The Ru and Os oxides are separated by distillation.
CITATION STYLE
NAGAI, H., SHIBATA, E., & NAKAMURA, T. (2014). Separation and Recovery of Rhodium and Ruthenium. Journal of MMIJ, 129(12), 694–700. https://doi.org/10.2473/journalofmmij.129.694
Mendeley helps you to discover research relevant for your work.