東洋大学, 2 森ノ宮医療大学, 3 大阪市立大学, 4 奈良女子大学) 【要約】動脈血酸素分圧及び二酸化炭素分圧は,脳血管 へ強く影響しているが,この 2 つの要因がどの様に脳血 管に影響しているか明らかでない.特に急性の低酸素環 境下では,両ガス分圧は劇的に変化する.本研究では, 急性低酸素条件における高炭酸血症が,動的な脳循環調 節機能に及ぼす影響を検討した.その結果,常酸素条件 下と比較して,急性低酸素暴露により脳自己調節機能及 び動脈血二酸化炭素分圧に対する血管応答は低下してい ることが示唆された.このような二酸化炭素分圧に対す る脳血管応答が鈍化することは,脳の酸素化動態のホメ オスタシスに関連しているのかもしれない. 1 .研究背景と目的 動脈血酸素分圧及び二酸化炭素分圧は,脳血管へ強く 影響することは知られている.特に急性の低酸素環境下 では,血中の低酸素状態により脳血管の拡張を引き起こ すが,一方で末梢化学受容器も同時に刺激する.つまり, 低酸素暴露での急性期における末梢化学反応を介した過 換気反応は,結果として,低炭酸ガス血症をもたらし脳 血流量を低下させる.しかしながら,この脳血流量の低 下は脳への酸素供給という観点において矛盾した反応で あると言える.以上の研究背景において,本研究では, 急性低酸素暴露時,高炭酸血症が脳循環調節機能(脳血 流の動脈血二酸化炭素分圧に対する応答特性及び脳自己 調節機能)に及ぼす影響を明らかにする.また呼吸性末 梢化学受容器反射がこの調節系に及ぼす影響についても 検討する. 2 .方法 健常な男性 8 名について,1 )常酸素,2 )低酸素,3 ) 低酸素かつ常二酸化炭素分圧の各条件下で脳血流の動脈 血二酸化炭素分圧に対する応答特性を算出した.その応 答特性は,動脈血二酸化炭素分圧変化時の中大脳動脈血 流速度及び内頸動脈血流量の測定から算出した.さらに 脳自己調節機能は,平均血圧及び中大脳動脈血流速度の 継時的変化から伝達関数を用いて算出し,評価をおこ なった. 3 .結果 急性の低酸素暴露は過換気を誘発し,低炭酸ガス血症 を示した.しかしながら,中大脳動脈血流速度及び内頸 動脈血流量に有意な低下は認められなかった.低酸素か つ常二酸化炭素分圧の条件では,動脈血二酸化炭素分圧 の増加及びそれに伴う脳血流の上昇が観察された.しか しながら,低酸素暴露により,脳血流の動脈血二酸化炭 素分圧に対する応答特性は低下した.さらに,低酸素か つ常二酸化炭素条件においてその応答特性の低下は改善 しなかった.一方,脳自己調節機能は,高炭酸血症によ り減少したが,低炭酸及び低酸素かつ常二酸化炭素条件 でこの変化は観察されなかった. 4 .まとめ 急性の低酸素暴露において,高炭酸血症は脳循環調節 機能を低下させるが,この現象は呼吸性末梢化学受容器 反射により起こる過換気と独立した反応であることが示 唆された. 5 .参考文献 Ogoh S & Ainslie PN(2009). Regulatory mechanisms of cerebral blood flow during exercise : new con-cepts. Exerc Sport Sci Rev 37, 123-129.
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低酸素環境下における脳血流の動脈血二酸化炭素分圧に対する応答特性:換気化学反射の影響. (2014). Japanese Journal of Physical Fitness and Sports Medicine, 63(1), 111–111. https://doi.org/10.7600/jspfsm.63.111
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