ワイルドはセクシーである.野生植物にはモデル植物 と一線を画した魅力が秘められているということだ.確 かに,シロイヌナズナやイネの全ゲノム解読は植物科学 の一つの金字塔となった.これによって,より多くの研 究者がこれらのモデル植物を扱うようになり,実験系が 整備され,さらに多くの研究者が集まった.その結果, 植物の分子生物学・分子遺伝学は飛躍的に発展した.一 方で,モデル植物の登場が,研究の画一化を誘導してし まったことも事実である.野生植物がいかに魅力的な特 徴を備えていようとも,敢えてそれらに挑もうとする研 究者が増えることはなかった.研究対象としての扱いや すさはモデル植物に敵わなかったのがその最大の理由で あろう.しかしながら,次世代シーケンサーの登場によっ て,そのようなモデル植物の圧倒的優位は崩れつつある. ゲノムが解読されていないなら自分で読んでしまえばよい,そんな時代が開かれつつあるのだ.そうであればこ そ,環境適応,性決定,形態発生など,野生種がもつ魅 力的な特性の数々が顧みられるべきである.全世界で収 集・保存されている遺伝資源は実に 800 万点を超える (McCouch et al. 2013).これらの中には,学術的に興味深 いもの,人類にとって有益な形質をもつものなどが多数 眠ったままとなっている.これらを掘り出し,解明して いくことが,次世代の研究者が担うべき重要な課題であ ると考えられる.
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Naito, K., Takahashi, Y., Yamauchi, T., Fukushima, K., Kazama, Y., Ezaki, B., & Tomooka, Norihiko. (2015). Wild is sexy! Breeding Research, 17(2), 64–70. https://doi.org/10.1270/jsbbr.17.64
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