Infestation Survey of Lynxacarus radovskyi on Feral Cats in the Northern Part of Okinawa Island, Japan

Abstract

日獣会誌 76 e62 ～ e67（2023） ─ e63 ─ した（倍率は×40，×100，×400） ．猫に皮膚病変を認 めた場合は，その病変部にセロファンテープを押しつけ て，同様の処置を施して顕微鏡下で観察した．さらに， 綿棒を用いて耳垢を採取し，同様の処置を施して顕微鏡 下で観察した．また，体表にノミの糞を認めた場合，ノ ミが寄生しているものとしてカウントした．ノミ類とマ ダニ類については全てを種同定してはいないため，結果 の中ではそれぞれノミとマダニとした．L. radovskyi の 鑑別に当たっては，宿主域が狭く猫に寄生するという 点，さらに，体は小さく（0.5mm 未満） ，側方から圧迫 された長円形で背中がアーチ状をしていること．Head Plate を含む顎体部と胴部の Propodosomal Plate は茶 褐色で，それ以外の胴部は内部構造が透けて皮膚に線状 模様がみられること．さらに，成虫では Head Plate と Propodosomal Plate との間に接合部を持つことが本 種を同定する特徴である（図 1）ことから，これらを根 拠として種判定を行った［6, 8, 11, 18］ ． 統計解析：月ごとの L. radovskyi の寄生率と 95％信 頼区間をまとめ，気象庁の観測地点（国頭村奥）での平 均気温と共に季節ごとの変化（春：3 月～ 5 月，夏：6 月～ 8 月，秋 9 月～ 11 月，冬：12 月～ 2 月）を比較した． その際，それぞれの月平均気温は，2014 年～ 2016 年の 数値の平均値を使用した．また，宿主による好発性を調 べるため，猫の性成熟期より体重 2.5kg 未満を幼猫，そ れ以上を成猫と分類し［19］ ，雌・雄間，幼猫・成猫間 でそれぞれカイ二乗検定を行い，L. radovskyi の寄生に 関して統計的に差があるかどうかを検討した．すべての 検定において有意水準（P 値）は 0.05 とし，これ未満を 統計的に有意とみなした． 成 績 本調査で検査した 93.7％（119/127） （95％信頼区間 （95％ CI） ：87.9 ～ 97.0％） の 猫 で 何 ら か の 外 部 寄 生 虫 を 検 出 し， そ の う ち 16.0％（19/119） （95％ CI： 10.4 ～ 23.7％）で脱毛，傷，痂皮及び炎症等の皮膚病 変を認めた．確認した最優勢種はノミ（Ctenocephalides felis（ネ コ ノ ミ） を 含 む） で， そ の 寄 生 率 は 93.7％ （119/127） （95％ CI：87.9 ～ 97.0％）と著しく高く，L. radovskyi と Otodectes cynotis（ミミヒゼンダニ）がと もに 12.6％（16/127） （95％ CI：7.8 ～ 19.6％）でこれ に続き，Felicola subrostratus（ネコハジラミ） ，マダ ニ（Rhipicephalus sanguineus（ク リ イ ロ コ イ タ マ ダ ニ）を含む） ，及び Notoedres cati（ネコショウコウヒ ゼンダニ）の寄生率は，それぞれ 4.7％（6/127） （95％ CI：2.0 ～ 10.1％） ，2.4％（3/127） （95％ CI：0.5 ～ 7.0％） ，及び 1.6％（2/127） （95％ CI：0.1 ～ 5.9％）と 低値であった（表 1，図 2） ．また，猫 1 頭当たりに対す る外部寄生虫の寄生種数は，1 種類が 66.9％（85/127） （95％ CI：58.3 ～ 74.5％） ，2 種 類 が 21.3％（27/127） （95％ CI：15.0 ～ 29.2％） ， そ し て 3 種 類 以 上 が 5.5％ （7/127） （ 95％ CI：2.5 ～ 11.1％） であった．L. radovskyi については単独での寄生はなく，本ダニが寄生していた すべての野猫でノミとの共寄生を認めた（表 1） ．L. radovskyi を含む 3 種類以上の外部寄生虫の同時寄生は， 野猫 6 頭で認めた． 調査を行った 9 カ所で捕獲した計 16 頭（鏡地 4，奥 間 4，与那 2，安田 1，安波 1，楚洲 1，辺野喜 1，桃原 1， 0.1mm 図 1 国頭村内の野猫から検出した L. radovskyi の成虫 茶褐色の Head Plate （HP）と Propodosomal Plate （PP）との間に，この種の特徴である接合部（矢頭）を 認めた 図 2 国頭村内の野猫から検出した外部寄生虫の種類と寄 生率（％） （n＝127） ノミの寄生率が特に高く， L. radovskyi は O. cynotis と 並 ん で 2 番 目 に 寄 生 率 が 高 か っ た． そ の 他，F. subrostratus， マダニ及び N. cati の寄生率は低値で あった．