精神科看護師のリカバリー志向性の特徴と関連要因を明らかにすることを目的として、2つの精神科病院に勤務する看護師455名を対象に自記式質問紙調査を実施した。調査項目は、1)基本的属性、2)リカバリー志向性(日本語版7項目版Recovery Attitudes Questionnaire:RAQ-7)、3)リカバリー知識(日本語版Recovery Knowledge Inventory:RKI)、4)リカバリーの認識、5)リカバリーへの関心、6)研修姿勢、7)リカバリー研修経験、8)リカバリープロセスにある精神障害者を知っている人数、9)リカバリー概念に基づいた支援経験の有無、10)楽観性(前向きさ・気楽さの2因子で構成される楽観性尺度を使用)である。調査対象者中、有効な回答を寄せた315名(有効回答率69.2%)の回答を分析した。分析対象者は、女性が55.8%、男性が44.2%であり、年齢(平均値±標準偏差)は40.4±9.8歳、看護師経験年数は16.9±10.0年、精神科経験年数は13.1±9.1年であった。RAQ-7合計点は27.2±2.7点、項目点ごとに集計した場合は「精神の病気からのリカバリーのしかたは、人によって異なる」が4.3±0.6点で最も高く、「重い精神の病気をもつ人は誰でも、リカバリーするために励むことができる」が3.3±0.9点で最も低かった。リカバリーの認識を有していたのは198名であり、この中でリカバリー概念に基づいた支援経験者は12名(分析対象者の3.8%、認識のある者の6.1%)に過ぎなかったが、精神科専門職全般を対象とした先行研究よりもRAQ-7得点が高かったことから、患者の社会復帰を傍で支える看護師の姿勢が、リカバリー志向性の高さに繋がっていると考えられた。RAQ-7は、リカバリー支援経験者、研修に積極的な人、リカバリーに関心がある人、リカバリーに関して知らなかった人よりよく知っていた人において高かった。RAQ-7は、RKIとは関連がなく、前向きな楽観性とは弱い正の相関(r=0.194)がみられた。以上より、看護師は、回復において個別性を重視しながらも悲観的に捉えやすいため、リカバリーに関する教育が必要であると考えた。また、看護師のリカバリー志向性を高めるには、意欲的に学習に取り組む姿勢の育成、リカバリー概念の理解の推進、前向きな楽観性の考慮や実践的なプログラムを取り入れた教育が重要だと考えた。(著者抄録)
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藤野裕子, 樋口裕也, 藤本裕二, & 立石憲彦. (2019). 精神科病院に勤務する看護師のリカバリー志向性の特徴と関連要因. 日本健康医学会雑誌, 27(4), 319–327.
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