我が国で著しい進展のあったδ15N, δ13Cを用いた窒素・炭素安定同位体精密測定法(SI法)によ る食物網解析法の進捗についてまとめた。特に,食物連鎖に見出された,窒素・炭素同位体効果 に関する二つの経験則に注目し,近年のアミノ酸レベルのδ15Nに関する成果を考慮に入れて,そ の成立の境界条件を考察した。経験則1:栄養段階(TL)が1段階上がるごとに3.4±1.1‰高くな る事が過去の研究で示されている。この経験則は動物の筋肉タンパクについて得られているが, ±1.1‰の変動について本稿で考察した。経験則2:海洋と陸域の代表的な食物連鎖について,窒 素・炭素同位体効果の比(Δδ15N/Δδ13C)が動物の種類に関わらず,ほぼ一定であることが示唆さ れている。一般的に,食物連鎖に沿ってδ15Nはδ13Cと統計的に有意な回帰直線の関係を示す。こ の関係の成り立ちの可能性について代謝系の共通性から考察した。
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