1 .口腔インプラントとは? カリエス (虫歯) や歯周病,事故等で歯を失った場合の治療 法として広く実施されているものにブリッジと義歯がある。 ブリッジは残存している歯を支えとして (支台歯) ,欠損部を いわゆる「橋渡し」で作製するもので,欠損歯数が多いと適 応できない,支台歯となる歯を削らなければならない等の欠 点がある。義歯は着脱式の補綴装置で,金属鉤を歯にかけて 装着するものであるが,食べかすが詰まりやすい,装置が大 がかりなため違和感や発音障害が生じやすい,前歯に及ぶも のは審美性が劣る等の欠点がある (図 1) 。これらの欠点を解 消する治療法として,現代の口腔インプラント (以下インプ ラント) は 1960 年代に開発され,日々改良を加え続けられて いる (図 2) 。本邦ではガン等による顎欠損を除きほとんどの 症例で健康保険は適応されないため高額な医療であるが,既 存の治療法の上記のような問題点を解消するものとして幅広 く臨床に用いられている。インプラント治療の成功率は,既 存の全ての歯科治療の中でも最も高いものの一つであり,治 療後 10 年経過時の成功率は 90% 以上と報告されている 。 口腔インプラント自体は,ローマ時代の遺跡から鉄製のイ ンプラントが顎骨に埋入されているものが発掘されるなど , コンセプト自体は古くから見られるが,近代のインプラント 治療は Brånemark らが提唱したもので ,治療法自体は提唱 されて 50 年程度である。純チタンが骨と強く結合することが, 解剖学者であり整形外科医でもあった Brånemark によって偶 然発見され, 人工の歯根としての応用を考えられたものである。 インプラントは人工歯根として顎骨に埋入されるが,上部 構造 (いわゆる歯冠の部分) を装着する前に骨が治癒する期間 を要し,当初は骨質が良好な下顎で 3 ヵ月,骨密度が低い上 顎では半年は必要とされていた。初期のインプラントの表面 は機械研磨されたものであり,インプラントと骨との結合 (Brånemark らが osseointegration と名付けている) に長期間が 必要であったためである。Brånemark によるインプラントの (c) 図 1 歯の欠損に対する治療法として, (a) 欠損に隣接した 天然歯を削合し,支台歯とするブリッジ, (b) 天然歯 に鉤をかけて維持する可撤性義歯, (c) 顎骨にインプ ラントを埋入し,インプラントの上に上部構造を装着 するインプラント治療の三種類がある。 歯肉 骨 アバットメント イ ン プ ラ ン ト 上部構造 アバットメント スクリュー 図 2 口腔インプラントの模式図。
CITATION STYLE
AYUKAWA, Y., ATSUTA, I., TSURUTA, K., MATSUSHITA, Y., & KOYANO, K. (2016). State-of-the-art of the Surface Modification of Oral Implants. Journal of the Surface Finishing Society of Japan, 67(6), 297–301. https://doi.org/10.4139/sfj.67.297
Mendeley helps you to discover research relevant for your work.