脳室内に投与したtaurineの交感神経活動に及ぼす影響を高血圧自然発症ラット(SHR)およびWistar-Kyoto系ラット(WKY)で定量的に検討した.実験はα-chloraloseおよびurethan麻酔,自発呼吸下で,呼気ガス炭酸ガス濃度を連続的に監視しながら行った.後腹膜的に大内臓神経を分離し,切断中枢端より双極白金電極を用いて自発性遠心性発射活動を導出した.大内臓神経活動を大腿動脈血圧,心電図および呼気炭酸ガス濃度とともにデータレコーダを用いて磁気テープに収録し,実験終了後,医用電算機(日本電気三栄,7T17)を用いて大内臓神経活動のパワースペクトル解析を行った.Taurine 300 μgをSHRの側脳室内に投与すると,大内臓神経活動の減少とともに血圧の下降,心拍数の減少が発現した.大内臓神経活動の総体を反映する総パワー値は血圧下降および心拍数の減少に伴って減少した.Taurine 300μg適用後10分のSHRの総パワー値は有意に減少し,適用前の64±11%(N=6)となった.SHRのtaurine 300 μg適用時の総パワー値の減少率はWKYに比べて有意に軽度であった.脳室内に投与されたtaurineの中枢性の交感神経活動抑制効果が直接的に示され,SHRの交感神経活動はWKYのそれに比較してtaurineに対する感受性が高いことが示唆された.さらにパワースペクトル解析の結果,SHRの大内臓神経活動中に発現する心拍性リズムに相当する成分がtaurine 300 μgの脳室内投与によって消失し,他の活動成分に比べ特異的に抑制されることが判明した.この事実は中枢内の圧受容器反射に関与する神経機構にtaurineに対する感受性の高い部分が存在する可能性を示唆している.taurineによる交感神経活動に発現する心拍性リズムの抑制作用がtaurineの抗高血圧効果の発現機序のひとつに関与している可能性も考えられた
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Gaitonde, M. K. (1970). Sulfur Amino Acids. In Metabolic Reactions in the Nervous System (pp. 225–287). Springer US. https://doi.org/10.1007/978-1-4615-7160-5_8
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