アルミニウム (Al) めっきは,下地基材を溶融 Al の中に浸 漬する溶融めっき法や減圧環境で行われる蒸着法などがある が,溶融めっき法では,600 ℃以上の環境に下地材料を浸漬 させるため,大きな面積の下地にも対応できる一方で,薄く めっき膜の厚さを制御することが難しい。蒸着法では,真空 系が必要であるため, 大きな下地に対しては困難であり, めっ きの速度も遅い。工業的な Al 電析法 (電解めっき法) として Sigal プロセスの導入が検討された時期もあったが,電解液 に揮発性・引火性の有機系液体が使われていることもあり, その検討をしていた殆どの企業は撤退し,現在ではアメリカ にある企業が小規模スケールで運用しているだけである。最 近では,難揮発性かつ引火性の低い電解液として溶融塩やイ オン液体,そして,それらに類する深共晶溶媒を用いた Al 電析法に関する研究が飛躍的な進歩を見せ始めている。ここ では,溶融塩,イオン液体にターゲットを絞り,それらを用 いた Al 電析に関する基礎的な情報と最近の進歩について紹 介する。 2 .溶融塩を用いた Al 電析 本会誌の 2009 年 8 月号に宇井幸一先生との共著で溶融塩 とイオン液体に関する解説を執筆させて頂いた 。基本的な 溶融塩中の Al イオンの溶存形態については重複することを ご容赦頂きたい。Al と溶融塩を結びつけると酸化アルミニ ウ ム (Al O ) を原料とした溶融塩電解プロセスであるホー ル・エルー法が思い浮かぶが,そのプロセスでの溶融塩は 1000 ℃以上で非常に高温である。溶融塩は高温の系ばかり でなく,各種塩の組み合わせや組成によっては 100 ℃以下に 融点を持つ溶融塩も存在する。例えば,AlBr-BBr 系の共晶 点は約-50 ℃になる 。以下に紹介する AlCl-NaCl-KCl の 共晶点も 100 ℃以下である。後半で述べるイオン液体とこの 溶融塩との区別について,融点が 100 ℃以下かそれ以上かで 分類するケースが散見されるが,上述のような 100 ℃以下の 溶融塩もあるため, 融点だけでそれらを分類することは難しい。 Al の電析実験に用いられる溶融塩の代表的なものは二元 系では AlCl-NaCl 系がある。この AlCl-NaCl 二元系状態図 を図 1 に示す 。AlCl は昇華性の物質であり,そのものだ けでは溶融塩を構成することができない。ルイス酸である AlCl (塩化物アクセプター) はルイス塩基として作用する NaCl (塩化物ドナー) と混合することで,ある温度で液体を 構成する。図 1 からわかるように AlCl 濃度が 0 mol%,す なわち純 NaCl の融点が 803 ℃であるのに対して,AlCl 濃 度が増加するのに伴い徐々に融点が低くなり,50 mol% の時 に急激に融点が低下し,160 ℃となる。この時の溶融塩中の
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UEDA, M., & TSUDA, T. (2020). Aluminum Electrodeposition in Molten Salts/Ionic Liquids. Journal of The Surface Finishing Society of Japan, 71(12), 729–733. https://doi.org/10.4139/sfj.71.729
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