1 .はじめに 圧電性とは,材料が有する線形的な電気機械変換効果を示 す。この圧電性は,絶縁材料に電気もしくは機械的入力をし た際に結晶構造の異方性による分極が生じることに起因し, 機械入力に対する電気出力を正圧電効果,また電気入力に対 する機械出力は逆圧電効果と呼ばれる。このことは,圧電材 料は材料そのものがセンサ,アクチュエータの機能を有して いることを意味しており,その優れた電気機械変換効果によ りこれまで様々な圧電材料応用素子が実用化されてきた。こ の圧電効果は,材料そのものの特性に起因するため,優れた 圧電材料の開発が最終的なデバイス性能を大きく左右する。 一 方, 半 導 体 技 術 の 進 展 と 共 に Microelectromechanical systems(MEMS) に関するデバイス,プロセス研究が,特に 1970 年以降活発となり,現在も様々な形態の MEMS 関連デ バイスの開発が継続されている。この MEMS 技術は,日本 語の直訳では「微小電気機械変換素子」を意味している。つ まり電気機械変換効果に代表される機能性をマイクロスケー ルの構造で実現することにその特徴がある。そのためこれま での MEMS デバイスは一般に Si の微細加工性を最大限に利 用することでその微細構造に起因する機能性を追求してきた。 これら Si-MEMS は,一般に Si と電極を中心とした単純な材 料系で構成され,対向する電極配置構造のキャパシティブセ ンサ,また静電アクチュエータのとして利用される。これら Si-MEMS の素子特性は,通常素子構造が決まれば単純な計 算でその出力を比較的正確に見積もることができるため,デ バイス設計上非常に有利である 。しかしその反面,素子の 性能が素子構造およびその加工精度等の物理的要因により決 定されるため,その限界性能が容易に予測され,それ以上の 機能性向上は困難となる。 2 .圧電 MEMS の特徴 Si 材料を中心とした従来の MEMS の機能限界を超えるた め,また圧電デバイスの新しい展開として,圧電材料を MEMS デバイスに導入する圧電 MEMS 技術が注目されてい る。圧電材料を MEMS へ実装する効果は,キャパシタとの 対比で考えることができる (図 1) 。キャパシタの静電容量は 電極間隔に反比例して増加するが,実際のコンデンサでは高 誘電材料が挿入され,誘電体の持つ高い誘電特性を利用する ことでその体積効率を大幅に増加させている。Si-MEMS に 圧電薄膜アクチュエータ 神 野 伊 策 a a
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KANNO, I. (2017). Piezoelectric Thin-Film Actuators. Journal of The Surface Finishing Society of Japan, 68(7), 387–391. https://doi.org/10.4139/sfj.68.387
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