二次性副甲状腺機能亢進症(2HPT)の発症機序は,"腎機能が低下すると副甲状腺ホルモン(PTH)分泌が亢進 し,尿中リン(P)排泄が増加することで高 P 血症の発症が回避されるものの,代謝性骨疾患の対価を支払う"とす る trade-off 仮説で説明される.慢性腎不全ラットへの P 吸着剤投与は,副甲状腺機能を低下させるとともに,骨 の劣化も改善するため,改めて P の蓄積が 2HPT の発症と病態の根幹をなすことが理解できる.また,透析患者へ のシナカルセト塩酸塩(シナカルセト)投与により,PTH低下に付随して骨からの P 動員が低下するため,血中 P は低下する.一方,保存期慢性腎臓病患者へのシナカルセト投与は,PTHの尿中 P 排泄促進作用を解除するため, 血中 P を上昇させるとともに,著明な低カルシウム(Ca)血症をもたらす.すなわち,PTH は血中 P 上昇および Ca 低下に抑制的に働いていることが確認できる.さらには,腎不全ラットへの fibroblast growth factor-23 (FGF23)に対する中和抗体投与により,血中 P,Ca,1,25(OH)2 vitamin D3[1,25(OH)2 D3]の上昇ならびにPTH 低下が認められる.すなわち,FGF23 はPTH とともに尿中 P 排泄を促進させることで,腎不全末期まで血中 P を 正常域に維持すると同時に,1,25(OH)2 D3産生低下を介して,PTH分泌に対し促進的に作用していると考えられる. 一方,腎不全ラットへ FGF23 中和抗体を長期投与した場合,骨組織改善が認められるものの,血管石灰化が促進し 死亡数が増加する.したがって,腎機能低下時に上昇する FGF23 は,代謝性骨疾患の対価を支払い,血管石灰化を 抑制しているものと考えられる.これらに加えて,副甲状腺における Ca 受容体,1,25(OH)2 D3受容体,FGF23 受容 体の発現低下や腎での a-klotho 発現低下も 2HPT の発症・進展に寄与していると推定される.
CITATION STYLE
Nagano, N., Ando, T., Tsutsui, T., Tamei, N., Ito, K., Shimomura, Y., … Ando, Y. (2013). A new concept for the pathogenesis of secondary hyperparathyroidism: Pharmacological validation of the trade-off hypothesis and involvement of FGF23/Klotho. Nihon Toseki Igakkai Zasshi, 46(6), 519–533. https://doi.org/10.4009/jsdt.46.519
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