化学生態学では,昆虫フェロモンのように同種間のコ ミュニケーションが一つの大きなトピックであるが,同 時に,植物とそれを食べる昆虫に見られる食う食われる の関係のような異種間の生物間相互作用も非常に興味深 い研究対象である.食物連鎖を考えるとわかりやすい が,自然環境では多様な生物種がお互いにかかわり合い ながら生活しており,そこにかかわる化学因子を見いだ すことで,自然界の成り立ちを理解する助けになる.本 稿では,植物とそれを取り巻く生物とのかかわりに焦点 を当てたい.根を下ろしたところから動くことのできな い植物は,植物を餌とする昆虫や微生物,また競合する ほかの植物種に対して,多様な防御物質を生産すること で対抗する.一方で,受粉を媒介する送粉者や菌根菌の ように,植物との共生関係の成り立ちにも物質的なやり 取りがかかわっている.植物の巧妙な生存戦略とその進 化,病害虫防除への応用について最近の話題や将来展望 を紹介する.
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ISHIHARA, A., NOGE, K., & XIE, X. (2020). 植物の化学防御. KAGAKU TO SEIBUTSU, 58(1), 46–53. https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu.58.46
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