外国語教育において,学 習 目標言語 を構成する様 々な形態素 を,ど の順序 で学習者 に 教示すれば,よ りよい効果が得 られるか とい う点について考慮することは重要である. そのためには,学 習者が どういった順序で主要 な形態素 を習得 してい くのか とい うメ カニズムを知ることが必要 とな る.1970年 代 ごろか ら盛んに行 われてきた第二言語学 習者の文法形態素の習得過程 を解明す る研究 によって,い くつかの異なるバ ックグラ ウン ド(母 語 ・年齢 ・学習環境な ど)を 持つ学習者グループ間に共通の習得順序が存在 するという説が一般的であった.一 方,1980年 代以降行 われた,日 本語を母語 とする 英語学習者の習得順序 に関す る研究では,そ れ までに明 らかになっていた他の母語を 持 つ英語学習者の習得順序 とは相関の低 い結果が得 られ,「学習者の母語 ・年齢 ・タス ク ・学習者環境等の違いによって,習 得順序 は変動する」 という新 たな説が生 まれた. 本研 究では,日 本 語母語話者の英語発話 コーパスであ るThe NICT JLE (Japanese Learner English) Corpus の エラータグ情報 を利用 して,主 要文法形態素の習得順序 を解 明 し,そ の結果がこの相反する二つの説のどち らを支持 し得 るものであるか,考 察 した.分 析の結 果,The NICT JLE Corpusで の習得順序は,前 者の説における習 得順序 とは相 関は低 く,後 者の説の基になった,日 本語 を母語 とする学習者 を対象 に 行われた先行研 究での順序 と相関が高い ことが判明 した.い くつかの顕著な差異のう ち,特 に,冠 詞 ・短複数形の-sと いった,日 本語 において該当する指標が ない形態素 が遅れて習得 される傾 向にあることが分かった.こ の ことか ら,本 研究の結果は,「学 習者のバ ックグラン ドの違いによって習得順序に も違いが生 じる」 という説をサポー トし得る ものであると考える.ま た,最 後 に,The NICT JLE Corpusに 付与 されて いるエ ラータグやス ピーキング能力 レベル情報 を用いて習得順序研究 を発展 させ,英 語教育現場 に応用する可能性について も検討 した.
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IZUMI, E., UCHIMOTO, K., & ISAHARA, H. (2005). Investigation into Japanese learners’ acquisition order of major grammatical morphemes using error-tagged learner corpus. Journal of Natural Language Processing, 12(4), 211–225. https://doi.org/10.5715/jnlp.12.4_211
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