採択日 2016 年 6 月 13 日 要約:集中治療室の生体情報モニタとして,心電図とパルスオキシメータは必須である。心 電図は心臓の電気的活動を示すが,パルスオキシメータは血管容積脈波 (plethysmogram) か ら脈拍数および SpO2 を測定する。SpO2 は SaO2 と違い動脈血採血の必要がなく,非侵襲的で ある。SpO2 は赤色光と赤外光を用いた吸収分光法 (absorption spectroscopy) で測定するが, 種々の測定障害がある。特に脈波の検出が難しい末梢低灌流と体動では, 測定精度が低下する。 これらへの対策はメーカーによって異なり,表示された SpO2 値の解釈には,測定原理への理 解が必要である。また SpO2 には透過型と反射型の測定形式があり,前額部で測定する反射型 はショック・低体温時にも動脈の拍動が維持され,酸素飽和度の変化への反応時間も透過型 より短い。よって, 末梢低灌流や体動がある集中治療室の患者の測定には反射型が適している。 Key words:① pulseoximeter,② plethysmogram,③ SpO2,④ absorptionspectroscopy, ⑤ near-infraredspectroscopy 総 説 パルスオキシメータの原理 小坂 誠 吉田 愛 大江 克憲 Ⅰ.はじめに パルスオキシメータは 1980 年代より普及したが, それ以前は動脈血ガス分析が酸素化評価に用いられて いた。指標としては SaO2 より PaO2 が用いられ,要因 として SaO2 は 100%が上限だが,PaO2 は 100-650 mmHg と hyperoxia も示せる。パルスオキシメータに よって,気管吸引での短時間の低酸素症も検出可能と なった。皮膚の薄い新生児では,加温 (43.5℃) 電極を 用 い た 経 皮 的 酸 素 分 圧 (transcutaneous oxygen tension,TcPO2) モニター 1) も使用可能だが,パルスオ キシメータによって新生児から成人まで,リアルタイ ムで酸素化評価が可能となった。 Ⅱ.パルスオキシメータの歴史 1942 年に Millikan 2) が,耳介での吸光光度分析法に よる SaO2 の測定を発表した。しかし組織と血液の吸 光度を区別していない方法で,定量性が悪かった 3) 。 パルスオキシメータの測定原理は,1974 年に日本光 電の青柳ら 4) が発表した。しかし,1985 年に日本製の 発光ダイオード (lightemittingdiode,LED) を搭載し た 米 国 製 パ ル ス オ キ シ メ ー タNellcor™ N-100 (Nellcor,USA) によって,世界へ普及した 5),6) 。 Ⅲ.測定原理 電磁波はガンマ線・可視光線 (380-760 nm) ・赤 外線 (760-1×10 6 nm) ・電波と順に波長が長く周波 数が低下し,赤外線は近赤外線 (near-infrared, NIR) (760-2,500 nm) ・中赤外線・遠赤外線に分けられ る 7) 。 あらゆる分子は特定の周波数の電磁波を吸収 (吸 光度) するが,可視光線または紫外線 (波長 200-380 nm) を物質に当てて吸光度から物質の濃度を測定す る分光光度計 (spectrophotometer) と NIR を用いる近 赤外線分光法 (near-infrared spectroscopy, NIRS) が ある 8) 。パルスオキシメータは可視光線の赤色光 (Red:波長 660 nm 付近) と NIR の赤外光 (IR:波長 940 nm 付近) の LED を用いるが,各 LED は製品ごと に波長が微妙に異なる。正確な物質濃度の算出には, 測定前に各 LED 波長における物質濃度と吸光度の検
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Kosaka, M., Yoshida, A., & Ohe, K. (2016). Principle of pulse oximetry. Nihon Shuchu Chiryo Igakukai Zasshi, 23(6), 625–631. https://doi.org/10.3918/jsicm.23.625
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