Parkinson病(Parkinson’s disease:PD)は, 中脳黒質のドパミン神経細胞の変性を中核とす る神経変性疾患で,錐体外路症状が前景となる 運動障害疾患に分類される.神経変性はドパミ ン神経細胞以外の多系統に及び,非運動症状も 高頻度にみられる.変性した神経細胞では,異 常にリン酸化されたα―シヌクレインを主成分 とするLewy小体が細胞質に出現し,PDはα―シ ヌクレイノパチーの 1 つと考えられている. 本邦での有病率は,100~180人/10万人とさ れるが,加齢も発症に寄与しており,今後,我 が国では患者数の増加が予想される.65歳以上 の有病率は,1 人/100 人とされ,神経変性疾患 のなかで認知症に次ぎ,今や高齢者診療のcom- mon diseaseとなりつつある.脳神経内科医のみ ならず,一般内科医,脳神経外科医ならびに家 庭医等,多くの診療科の医師が診療に携わる状 況になっている. 「 パ ー キ ン ソ ン 病 診 療 ガ イ ド ラ イ ン 2018」( 日 本神経学会,2018 年:以下,本ガイドライン)1) は,近年の診断・治療に関する著しい進歩, 2014年のMinds(Medical Information Network Distribution Service)による「Minds診療ガイド ラ イ ン 作 成 の 手 引 き 2014」の 改 訂( 以 下 ,Minds 2014)を踏まえ,「パーキンソン病診療ガイド ライン」作成委員会(委員長:服部信孝,副委 員長:武田篤)により作成され,2018 年 5 月に 発刊された.本ガイドラインの改訂・作成は, 日本神経学会が中心となって行ったが,PD診療 に関わるさまざまな領域の専門家の意見を反映 するため,協力学会として,日本神経治療学会, 日本脳神経外科学会,日本定位・機能神経外科 学会ならびに日本リハビリテーション医学会が 参加している.本ガイドラインの第1の特徴は, 従来の「治療ガイドライン」から「診療ガイド ライン」へ発展し,運動症状・非運動症状に対 する治療のみならず,診断基準,画像検査,また,遺伝子や環境因子等に関しても,全般的に 網羅されている点である.本稿では,この新し く発刊された本ガイドラインを紹介する.
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Takahashi, K. (2019). パーキンソン病診療ガイドライン2018. Nihon Naika Gakkai Zasshi, 108(7), 1435–1441. https://doi.org/10.2169/naika.108.1435
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