は1960年頃 Cahn らを中心に取り上げられて以来,理論的発 展が進んだ.次にその取り扱いについて簡単に記述する. ・ カーン(Cahn)の線形スピノーダル分解理論 合金の相分解過程は,基本的には式(3.1)のカーンとヒリ アード(Cahn Hilliard) (1) の非線形拡散方程で記述される. &c &t = & &x { ÃD (&c &x)}-2 ÃK & 4 c &x 4 (3.1) ここで, ÃD は相互拡散係数, ÃK は勾配エネルギー係数 (gradient energy coefficient)で, ÃK=M c (c 0 , T)K (K は濃度 勾配エネルギー係数)である.式(3.1)は非線形方程式なの で,その正確な取扱いは解析的にかなり困難であるため, Cahn らは非線形項を無視した線形方程式を導出し,相分解 を解析的に取り扱った.その線形方程式から濃度変動量(c-c 0)は, cc 0 =A(b, 0)exp{R (b)t}cos(bx) R(b)=-MV m (G 0 ″ +2h 2 Y 〈hkl〉 +2Kb 2)b 2 (3.2) と書き示される (1) .ここで R(b)は振幅拡大係数と呼ばれ, 波数 b に対して図示すると図.となる.最大振幅拡大係数 R(b m)を与える波数 b m は &R(b)/&b=0 より, b m =(1/2)[-(G 0 ″ +2h 2 Y 〈hkl 〉)/K ] 1/2 (3.3) また,その時の R(b m)は式(3.4)で与えられる. R(b m)=MV m (G 0 ″ +2h 2 Y 〈hkl〉) 2 /8K (3.4) さらに,R(b)が正になるか負になるか,つまりその波の振 幅が,時効によって,増幅・減衰するかの臨界波数 b C は式 (3.2)より,G 0 ″ +2h 2 Y 〈hkl〉 +2Kb 2 =0,すなわち, b c =[-(G 0 ″ +2h 2 Y 〈hkl〉)/2K ] 1/2 (3.5) G 0 ″は G 0 の濃度 c による 2 階微分を意味する.b m と b C の関 係は b m =b C / 2 である. 式(3.4)および図3.2が意味するところは次のようである. 時効前(t=0)に若干の濃度ゆらぎが過飽和固溶体中に存在す れば,これのフーリエ成分である各正弦波は各々の波数 b によって定まる R(b)を持っており,式(3.4)に従って振幅を 増大または減衰する.式(3.4)の G 0 ″は変態を促進する化学 的駆動項であるが,弾性歪エネルギー項 2h 2 Y 〈hkl〉 および界 面エネルギー項 2Kb 2 は共に正で分解の阻止項である.この うち 2h 2 Y 〈hkl〉 は一般に結晶方位依存性を持つ.したがっ て,弾性係数 Y 〈hkl〉 の最も低い方向の波のうち,最大の振幅 拡大係数 R(b m)を持つ波が時効時間の経過につれてその振 幅を指数関数的に増大させ合金組織を支配するようになる. 多くの合金では Y 〈100〉 が最低なので, 〈100〉 方向に高低濃度 域が周期的に並んだ,いわゆる 〈100〉 変調構造組織になる. 一方,h が小さくて 2h 2 Y 〈hkl〉 の値が |G 0 ″ | に比較して極め て小さいか,または 2h 2 Y 〈hkl〉 は大きくとも Y 〈hkl 〉 の方位依 存性がほとんど無い等方弾性体の場合には,種々の方位の分 解波がほぼ同程度の b m と R(b)を持ち,これらの波が合成 されて出来る分解組織には方向性がなく,いわゆる「まだら 構造(mottled structure)になる. このスピノーダル線形理論は,古典的核生成の世界に新し い観点を与えた点で画期的なものであった.しかしながら, 線形理論であったためにスピノーダル臨界組成での相分解が 記述できず,もともと連続である相分解機構をスピノーダル 線を挟んで,核生成-成長機構とスピノーダル分解の 2 つ の別の機構の如く認識されてきた.しかしこれは線形理論で あったためで,非線形理論を解くことにより,形成組織はか なり異なるものの,両者は一連の現象である事が認識されて いる. ・ 非線形スピノーダル分解理論 Cahn による線形な取り扱いは,分解初期の濃度変動の小 さい時にしか適用できない.分解後期では省略された非線形 項を考慮する必要がある.これに関する研究は Cahn 以後, Khachaturyan (2) など多くの人たちによって,拡散方程式の 非線形項を取り入れた計算が行われている.その際,多くの 研究者が固溶体自由エネルギーとして正則溶体近似式を用い ている.過飽和固溶体の自由エネルギー濃度曲線は,合金の 種類や温度によって種々な形状を有している.したがって, 正則溶体近似では複雑な実際合金の自由エネルギーを表現で きず実用性に欠ける.その為,ここでは様々な過去の固溶体 エネルギー式を表現できるように高次式が用いられている. この手法は式(3.
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Miyazaki, T. (2014). The Formation of Microstructure in Materials and Its Theoretical Basis (II) ^|^#xFF5E;Spinodal Decomposition, Morphology of Precipitates^|^#xFF5E; Materia Japan, 53(9), 419–426. https://doi.org/10.2320/materia.53.419
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