1.トラクタの出荷・輸出台数の状況 ⑴ 国内向け 平成 27 年の国内向け出荷台数は 48,440 台で前年比 110.5 % となっている(図 1) 。トラクタは田植機・コン バインに比べると出荷台数が 2 倍以上あり,農業機械の 中で最もボリュームのある機種であることが分かる。使 用時期・用途の限定される田植機・コンバインと異なり, トラクタが水田以外にも畑作・野菜作等,幅広い作業に 年間を通じて使えることがあり,今後も安定した需要が 見込まれる。トラクタ出荷台数を馬力別にみると,20 PS 未満,20∼30 PS,30∼50 PS 共に堅調である。50 PS 以上は平成 27 年に減少しているが,消費税,排ガス規制 前の駆込み需要の反動であり,このクラスも今後堅調な 伸びを示すものと思われる(図 2) 。 ⑵ 輸出向け 平成 27 年の輸出向け出荷台数は 107,493 台で前年同 期比 108.9 % と堅調な動きを示している(図 3) 。馬力別 で見ると 30∼50 PS クラスの伸びが大きく,欧米のコン パクトトラクタ市場の回復が見られる。 2.製品技術動向 ⑴ 国内動向概要 トラクタの開発においては,国内の農業従事者の減少 と高齢化へ対応した技術が展開されてきた。主に作業効 率を高めるためのトラクタの大馬力化, 操作系の自動化, 無段変速化と作業機の大型化への対応である。近年,そ の流れは更に拡大しており,省力化,生産コストの低減, 農業技術の伝承といった目的のために ICT 技術の織込 みが行われているのが大きな特長である。 安全面では, 転落・転倒事故を防止するための片ブレー キ誤操作防止装置の採用,夜間走行の安全性向上のため の低速車マークの装着が進んでおり,更なる安全性の確 立を目指している。 環境への配慮としては平成 27 年 9 月以降に出荷され た 19 kW 以上のトラクタに関しては,特殊自動車排ガス 第 3 次規制(特自排ガス 3 次規制)をクリアしたエンジ ンを搭載している。 農 業 食 料 工 学 会 誌 第 78 巻 第 6 号(2016) 452( 10 ) 小川寛士 (おがわ ひろし) 1971 年 9 月生 1995 年井関農機 (株) 入社, 市場開発部, 販売促進部,営業推進部を経て, 現在,商品企画部 E-mail:h_ogawa@iseki.co.jp 特 集 トラクタ・トラクタ作業機 Tractor and Implement Hiroshi OGAWA キーワード:農用トラクタ,トラクタ用作業機 Keywords:agricultural tractor, tractor implement 図 1 トラクタ,田植機,コンバイン国内向け出荷台数(日農工データ 1-12 月)
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Renius, K. T. (2020). Tractor and Implement. In Fundamentals of Tractor Design (pp. 217–260). Springer International Publishing. https://doi.org/10.1007/978-3-030-32804-7_7
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