がん予防やがん検診は、がんで苦しむ人を減らすために重要な方法である。しかしながら、これらについては十分に科学的根拠(エビデンス)があるにもかかわらず、必ずしも十分に実践されていない(エビデンス・プラクティスギャップ)。禁煙などのがん予防やがん検診受診などはすべて個人の行動変容を促すものであり、近年、行動変容を促すには従来の「教育的アプローチ」では十分でなく、「環境的アプローチ」への変化が必要とされてきた。なかでも、従来のモデルや理論に新たな行動科学的なアプローチを加味したアプローチの効果が期待されている。本稿では、なかでも、ソーシャルマーケティング及びナッジを利用したアプローチについて取り上げる。ソーシャルマーケティングは、商業マーケティングに用いられてきた概念や技法をがん予防・がん検診といった公衆衛生的な行動変容を促すために用いるものである。ナッジは人々が行動を選択するときのくせ(惰性・バイアスなど)を理解して、強制することなく、選択の自由を確保した上で、人々が望ましい行動を選択するように導くアプローチである。望ましい行動という点で、公衆衛生政策や保健政策との相性がいい手法といえる。我々が行った大学生に対する禁煙・防煙キャンペーンを例に、分析、戦略開発、コミュニケーションのデザイン、実行、評価とフィードバックといったソーシャルマーケティングのプロセスを説明する。また、がん検診の受診率向上プロジェクトを例に、ソーシャルマーケティングに加え、ナッジなどの行動科学的方法を活用した行動変容へのアプローチについても例示を行う。(著者抄録)
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Mizota, Y., Fujino, M., & Yamamoto, S. (2020). Promotion of Evidence-based Cancer Prevention and Screening Using Communication Strategies. Iryo To Shakai, 30(3), 321–338. https://doi.org/10.4091/iken.30-321
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