社会調査は, 現代社会で認知され定着してきた一方で, さまざまな問題や困難な状況に直面している.それらの問題を大きくわければ, ひとつは社会調査の方法論に関する社会学の問題, もうひとつは調査の対象とされる社会の側から要請される問題があげられる.本稿では, 方法論の混乱と対立がおもに伝統的な実証主義的立場とあたらしく台頭した構築主義的立場の認識枠組みの違いにあり, 社会における困難とは調査者と被調査者の関係を軸にしたポリティクスと倫理の問題であると考え, それらの実情と論点について述べた. 実証主義と構築主義の認識枠組みは, 何を現実と考えどのように把握するかで大きく異なる.社会的現実は唯一の事実なのか, それともフィクションなのか.調査過程は, 被調査者から情報を引き出すことなのか, それとも被調査者と相互的に現実を構築することなのか.さらに, 調査者と被調査者の関係が構造と相互性の2つのレベルの非対称性によって構成されていることに注意を促し, それをふまえながらもその変革のさまざまな可能性についてもふれている.また, それにともなう調査倫理の制度化の必要性と制度化にあたっての困難にも言及した.
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SAKURAI, A. (2003). Difficulties in Social Research. Japanese Sociological Review, 53(4), 452–470. https://doi.org/10.4057/jsr.53.4_452
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