Mechanism of vacuole inheritance

Abstract

はじめに 液胞は， 一重膜に囲まれたオルガネラである． 膜上 には， 液胞型 H +-ATPase などプロトンポンプが存在し， その内部は酸性に保たれている． 液胞は， 様々な加 水分解酵素を含み， 細胞内の不要となったタンパク質， 糖，核酸などを分解する． また，液胞の他の機能として， 細胞内 pH やイオンの調整， 膨圧の発生， 二次代謝産 物の蓄積， アポトーシスなどが知られる （De 2000）． 液胞の機能は， 細胞にとって， 非常に重要である． 種子植物では， 液胞機能の欠損は， 形態形成の異常 や胚性致死となる （Rojo et al. 2001）． 出芽酵母におい ては， これまでに液胞を恒常的に持たない変異体は得 られていない． 従って， 液胞はやはり必須のオルガネ ラであるといえる． 動物では， リソソームが液胞に相当 する． リソソームの機能の不全は， ゴーシェ病やガン グリオシド症など 40 種以上のリソソーム病の原因となる． したがって液胞を保持することは， 細胞の機能に重要 であると考えられる． 液胞やリソソームの形態は生物種や細胞，組織によっ て違う． たとえば種子植物の茎や葉に存在する細胞は， 1 つの液胞を含み， それらは細胞体積の殆どを占める． また， 出芽酵母の細胞は比較的容積が大きい， 5~6 個 の液胞を持つ． そして， 植物の分裂組織や動物細胞 のように， 容積の小さい液胞 ・ リソソームが細胞内に数 十から数百個存在することもある． 液胞の分配機構も 形態や機能の多様性を反映しているのか， 一通りでは ない． 以下にこれまで知られる液胞の分配機構につい て紹介する． 出芽酵母の液胞の分配機構 液胞の分配機構は， 主に出芽酵母で研究されてき た． 酵母では， 細胞分裂 （出芽） の開始と共に， 液胞 の一部が分裂面付近に移動する． 娘細胞が成長すると， 液胞は小胞や管状の構造へと変化し， 娘細胞の中へ 運ばれる． 娘細胞の中では， 融合し， 大きな液胞とな る （Weisman Summary: Vacuoles have pivotal roles in intracellular digestion, pH and ion homeostasis, and metabolite storage. Although vacuoles can be synthesized de novo (Hoh et al. 1995, Catlett and Weisman 2000), they are inherited from mother cells to daughter cells during cell division. This vacuolar inheritance would enable cells to function properly right after mitosis. Yeast vacuoles are inherited using class V myosin and actin. In unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae, which lacks conventional actin and myosin, vacuoles are inherited by binding to mitochondria. In this review, I summarize our current knowledge in mechanisms for vacuole inheritance and discuss future perspectives.