1 .はじめに 走査電子顕微鏡 (SEM) の一般的な試料作製法には,凍結 割断法,ミクロトーム法,機械研磨法などあり,比較的大き くて丈夫な試料に対して好適である。凍結割断法は,急速凍 結により試料形状が保持される一方,目的の観察面を得るこ とが難しく,また平滑な断面を得ることも困難な場合がある。 ミクロトーム法は,ナイフで試料の断面を作製する手法で連 続切片も取得できる一方で,応力により平滑な断面を得るこ とが難しく,且つオペレータに熟練の技術を要する。機械研 磨法では,試料は樹脂包埋し,水や研磨剤で研磨するため, 比較的容易に平滑な断面を得ることができるが,柔らかい試 料など樹脂包埋や研磨が困難な場合や水などを嫌う試料に対 しては適用が難しい。 イオンミリング法は,ブロードのイオンビームを用いて試 料を削るため,応力の影響を回避し,幅広い分野の試料に適 用できる手法として利用されている。本稿では,SEM 用試 料に広く適用されている平面ミリング法と断面ミリング法の 2 つの方法について,その特徴と適用事例を紹介する。 2 .イオンミリング法 イオンミリング装置は,SEM 観察による試料の内部構造 観察,分析のための前処理装置であり,主にイオンガン,試 料室,操作部で構成されている。イオンガンから集束させな い Ar イオンビームを試料へ照射させるが,イオンビームの 広範囲照射や遮蔽板を介したイオンビーム照射に加え,試料 の回転・反転・連続傾斜によりビーム照射角度を変えること で,結晶方位や組成によるミリングレート差に起因する凹凸 の発生を抑え,1 ~ 5 mm 角程度の加工領域を得られる。イ オンミリング装置 (IM4000:日立ハイテク製) による平面お よび断面ミリング法を次に示す , 。 2.1 平面ミリング法 平面イオンミリングは,加速電圧 1 ~ 6 kV 程度のイオン ビームを試料表面に斜めに照射して,直径約 5 mm の範囲を 加工する方法である。イオンビームの照射角度の選択によっ て, 「レリーフミリング」と「フラットミリング」の 2 種類
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Kaneko, A., & Takasu, H. (2015). Introduction of Ion Milling System and Its Application. Journal of the Surface Finishing Society of Japan, 66(12), 581–585. https://doi.org/10.4139/sfj.66.581
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