Abstract
1 .はじめに コ ー ル ド ス プ レ ー (Cold Spray:CS) 法 は,1980 年 代 に Alkhimov,Papyrin らによって考案された比較的新しい手法 であり ,Cold Gas Dynamic Spray や Kinetic Spray とも呼ば れる。CS 法は,空気,窒素 (N ) またはヘリウム (He) などの 圧縮気体により,数十μm オーダーの金属微粒子を亜音速か ら超音速レベルにまで加速し,固相状態のまま基材に衝突さ せることにより数百 μm から数十 mm の厚い皮膜を形成させ ることが可能な技術である。CS 装置の機器構成は比較的シ ンプルで,ガスを体積膨張させ高速ガス流を作るヒーター, 粒子を送る粉末供給装置,および粒子をガス流に乗せて加速 させるためのノズルである。現在 CS 法は,プラズマなどに よって金属やセラミックス微粒子を溶融させ基材に衝突させ ることにより皮膜を形成させる溶射 (TS:Thermal Spray) の 一種に分類されている。しかしながら CS 法は,粒子を溶融 させることなく固相状態のまま成膜する点で従来の溶射法と 決定的に異なる。そのため,大気中で緻密な皮膜が施工可能, 酸化,熱影響,および熱応力を抑制,厚膜 (cm オーダー) の 施工が可能,圧縮残留応力を有する皮膜が形成,施工速度が 極めて速いなど様々な利点を有する 。さらに,近年では 一部のセラミックス材料に関しても成膜が可能となっており, CS 法の可能性が拡がっている。 しかし,粒子の付着メカニズムに関しては,未だ統一した 見解がなく,多くの研究者らが,様々な付着メカニズムを提 案している。例えば,Y. Xiong ら は Al 基材上への Al 粒子 付着の場合,粒子が基材へ衝突する際,断熱昇温と急速冷却 により動的なアモルファス化と再結晶が起こり,数 nm のア モルファス層ができることで接合が起こっていると述べてい る。X.J. Ning ら は,Al-Sn 合金を SUS304 上へ付着させた 場合,粒子の衝突時に Sn が溶融し,これが接着剤的な作用 をすることで付着していると述べている。また,M. Grujicic ら は,粒子衝突時に界面近傍で大きなせん断応力が作用し, 粒子が基材へ巻き込むように変形することによる機械的なイ ンターロック効果が付着に効いていると述べている。このよ うに付着メカニズムは,界面近傍でのアモルファス化・再結 晶化による結合,粒子表面の極表層部分が溶融することによ る接合,あるいはせん断変形による機械的な接合など,様々 な提案がなされているものの,詳細なメカニズムは未解明の ままである。付着メカニズムが未解明であることは,CS 法 を適用したアプリケーション拡大の障害となっており,早急 に付着メカニズムを明らかにし,安全・安心な CS 皮膜・CS 補修を実現すべきである。本稿では,CS 法による固相粒子 の付着メカニズムに関し,著者らが検討した低圧型 CS によ る Al 基材上への Al 粒子の付着メカニズム検討例を紹介する。 また,低圧型 CS を利用したセラミックス材料の付着条件に 関しても説明し,金属粒子が付着する場合との違いについて も解説する。 2 .低圧および高圧コールドスプレー CS 法は,その作動ガス圧力および作動ガス温度から低圧 型と高圧型に大別される。現在高圧型と呼ばれているものは, 作動ガス圧力が 2 ~ 5 MPa 程度であり,作動ガス温度は最 大で 1000 ℃ となっている。高温高圧による粒子速度の増 加や粒子温度の上昇により,高融点金属材料も高効率で成膜 することを可能にしている。しかしながら,高温高圧を成し 遂げるために,装置が比較的大規模になってしまう。 一方,低圧型 CS は,作動ガス圧力が 1 MPa 以下であり, また作動ガス温度も最大で 400 ~ 500 ℃程度と高圧型に比べ 低い。そのため高温化による気体の体積膨張が稼げず,粒子 速度が高圧型に比べ遅い。そのため,高融点金属材料は成膜 することが困難であり,純 Al や純 Cu といった比較的軟ら かい金属材料の成膜が可能となっている。通常,低圧型 CS 装置の作動ガス圧力は 0.5 MPa 以下であり,成膜効率は高圧 型に比べ顕著に劣る。しかしながら,装置が非常にコンパク トであることや作動ガスに圧縮空気を利用可能といった利点 コールドスプレー法における固相粒子の付着メカニズム 小 川 和 洋 a a 東北大学 大学院工学研究科 附属エネルギー安全科学国際研究センター (〒 980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-01)
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OGAWA, K. (2012). Mechanisms of Solid Particle Deposition in Cold Spray. Journal of The Surface Finishing Society of Japan, 63(9), 548. https://doi.org/10.4139/sfj.63.548
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