Abstract
はじめに 研究室では,代々の学生達が呑み代の足しにするた めに 1 円玉貯金をしている。貯金箱代わりに手頃な大 きさの缶に貯めているのだが,ふと,いくら貯まって いるのか気になった。ちょうど手隙の学生二人を捕ま え,大量の 1 円玉をふたつに分けてそれぞれに渡して 数えてもらった。ひとりの学生は 1 円玉を十枚重ねた 山を根気よく作り続けて枚数を求めた。もうひとりの 学生は与えられた 1 円玉全体の重さを量り,1 円玉一 枚の重さを 1 g として枚数を求めた。 「使い込まれて 軽くなったり汚れて重くなった 1 円玉もあるだろう」 と指摘すると,今度は何枚かの 1 円玉の重さをそれぞ れ量り, 「与えられた 1 円玉は○○○±△枚です」と 報告してきた(第 1 図) 。 さて,この学生二人は 1 円玉の枚数を正確に求める ことができたのであろうか。言うまでもなく,前者は 直接枚数を数えた訳であるから極めて正確であること が期待できる。後者は 1 円玉の枚数を求めるために, 一枚当りの重さという『重量と枚数の関係性』から枚 数を求めた。1 円玉それぞれの重さのばらつきが十分 に許容できる場合,この方法で求めた枚数は正確だと 考えて構わない。直接枚数を数える方法が極めて正確 だといえども,1 円玉がバケツ一杯分あったら後者の 方法を取るべきだろうし,量るものが分子のように直 接数えることができないものであれば後者の方法を取 らざるを得ない。日頃,我々が定量している物質は, アミノ酸にしろ糖にしろ,分子をひとつひとつ数える ことができないため,1 円玉の『重量と枚数の関係 性』のような測定可能な別の指標を用いて定量するこ とになる。 定量における基礎知識 測定可能な別の指標を用いて定量するとなると, 『定量の対象物と測定可能な指標との関係性』をでき るだけ正確に把握することが必要だ。そのためにまず 理解しておくべきキーワードが 3 つある。有効数字, 誤差,そして検量線だ。 有効数字 1 mg/ml の標準試料を 3 倍希釈した液の濃度はい く ら だ ろ う か。 電 卓 に「1 ÷ 3 = 」 を 入 力 す る と HPLC による定量法の基礎知識 定量分析を行うと,必ず「有効数字」や「誤差」が付きまとう。そして,統計学や推計学のやっかいにな ることになるが,なかなか教科書を開く気になれない。本解説は,身近な実例を引きながら,分かり易くそ れらの概念を紹介したもので,定量分析に関わる方に(私も含めて) ,一読をお勧めしたい。 中屋 慎・小谷口美也子・北村進一 1円玉貯金 大量にある1円玉を数えたい 一枚ずつ数えるか… 一枚当りの重さと全体の重さの 関係から求めるか… 第 1 図 大量にある 1 円玉の枚数を調べる方法
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NAKAYA, M. (2015). How to Do Quantitative Analysis Using HPLC. JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN, 110(5), 288–297. https://doi.org/10.6013/jbrewsocjapan.110.288
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