Abstract
漢字に選択的な失書を呈したアルツハイマー病と思われる症例を報告した。症例は51歳右利きの男性で、漢字が思い出せずまた書けないことが主訴であった。本症例の特徴は、軽度の記憶障害および構成障害を認めるが、全般的知的機能障害が軽度であり、また失行、失認は認められず、さらに言語症状としては失語が存在せず、文字の読みにも問題がなく、仮名書字の障害が極めて軽度であるのに対して、漢字書字の障害が重度であったことである。漢字構造の結合・分解課題や漢字の正誤弁別課題の結果から、本症例における漢字失書は、漢字の視覚的イメージ(字形)の想起困難、および書字行為の間、そのイメージを保持することの障害により生じた可能性が高いと考えられた。またこの背景には、漢字の視覚的イメージの細部の想起障害と書字運動覚の障害の存在が示唆された。MRIおよび脳血流画像所見から、本症例の漢字失書の出現には、両側頭頂葉および左側頭葉後下部の障害が関与していると想定された。(著者抄録)
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Saito, F., Kato, M., Muramatsu, T., Fujinaga, N., Yoshino, M., & Kashima, H. (2008). Pure agraphia for Kanji (logogram) characters and visual images deficits in Alzheimer’s disease. Higher Brain Function Research, 28(4), 392–403. https://doi.org/10.2496/hbfr.28.392
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