1.研究の背景と目的 本研究は,首都圏の都市鉄道が近年抱える課題の 1 つで ある混雑を対象に,これを地域差のあるオフピーク通勤に より緩和できるかどうかに関して検討することを目的とし ている. 国土交通省は, 2000 年の運輸政策審議会答申第 19 号において,2015 年までに,首都圏における都市鉄道の主 要区間の平均混雑率を全体として 150%以内とするととも に,すべての区間のそれぞれの混雑率を 180%以内とする ことをめざすとしている.しかし,首都圏における主要区 間の平均混雑率は,未だ目標値である 150%に達していな い.また,最混雑時間帯 1 時間の平均混雑率が 180%を超 える区間が複数存在している. 朝ピーク時間帯における混雑から派生する遅延も問題で ある.これには,近年の鉄道輸送サービスの高度化が影響 しており,朝ピーク時間帯における高頻度運転下では,混 雑発生による発車点検時間の増加といった僅かな要因によ り,ダイヤ乱れが発生し易くなっている.さらに,ダイヤ 乱れが相互直通路線である他社・他線区に直接波及するこ とによる輸送トラブルの広域化やダイヤ回復の遅れといっ た問題も生じている.これらの問題に対して,国土交通省 は,2011 年に「サービスの高度化に伴い発生する遅延等に 対応した定時運行の確保方策に関する調査」を実施してお り,その調査結果に基づき,対策の 1 つとして,オフピー ク通勤の推進を挙げている. オフピーク通勤を実際に推進するに際して,個人レベル では, 初乗り乗車駅における乗車時刻をずらす時差出勤を, 企業レベルでは,始業時刻をずらす時差出勤・フレックス タイム制度の導入を行う必要がある.しかし,オフピーク 通勤を個人レベル,あるいは企業レベルで検討し,乗車時 刻や始業時刻を朝ピーク時間帯の前後に任意に設定して実 施しても,郊外から都心に向かう鉄道通勤旅客が時間的空 間的に重なり合い,区間によっては必ずしも混雑緩和の効 果が表れない可能性がある. 以上の点を踏まえ,本研究では,首都圏を対象に,時間 軸を考慮した鉄道ネットワークに大都市交通センサスに基 づく OD 旅客需要を利用者均衡配分により配分することに より,オフピーク通勤による鉄道混雑緩和が時間的空間的 に生じるための鉄道利用者の初乗り乗車時刻と最終降車時 刻の分布を地域別に求める.また,現状をその分布に近づ けるために鉄道利用者の鉄道利用時刻を現状から朝ピーク 時間帯の前後のどちらにどれだけ変更してオフピーク通勤 すれば良いかという点に関しても明らかにする. 2.既往の研究 本研究では,鉄道利用者の鉄道利用時刻分布を扱うため に,時間軸を考慮した鉄道ネットワーク,すなわち時空間 ネットワークを活用する. そのため, 時空間ネットワーク, リンクコスト関数,オフピーク通勤について既往の研究を 整理する. 時空間ネットワークに関して,時間を明示的に考慮して いる研究では,鉄道ネットワークを平面的に捉える場合と 空間的に捉える場合がある.鉄道ネットワークを平面的に 捉える場合,朝ピーク時間帯周辺の時間帯を離散的に設定 して,配分計算を行うことが多い.主な研究例としては, 鉄道旅客の時刻集中特性予測モデルを作成した上で,鉄道 ネットワークに配分した研究 1)2) がある. 鉄道ネットワーク を空間的に捉える場合では,横軸方向に時間軸を設け時刻 を表現し,縦軸方向に空間軸を設けて,駅とダイヤグラム を表現することにより,動的な問題を静的な問題としてい る.その上で,鉄道利用者の列車選択行動に影響する不効
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Nishiyama, N., & Muromachi, Y. (2014). Railway Congestion Mitigation in Tokyo Metropolitan Area by Off-peak Commuting with Local Variation. Journal of the City Planning Institute of Japan, 49(3), 849–854. https://doi.org/10.11361/journalcpij.49.849
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