Abstract
U.ベックは,20世紀後半,とりわけ1970年代以降に顕在化した社会の構造変化を「再帰的近代化」としてとらえる社会学者の一人である.再帰的近代の主要局面として,リスク社会,グローバル化と並び,「個人化」があげられている.本稿では,ベックの個人化論を検討することで,個人化という用語でもって彼がどのような事態を表現しようとしたのか,個人化論の学説史上の意義は何か,個人化は概念として社会学においてどのような機能をもつのかを探る. 具体的には,まず,ベックの個人化論は,〈一般社会学概念〉としての個人化,〈時代診断〉としての個人化,そして〈規範的要請〉としての個人化の3つに分類可能であること,この3者のうち彼の主要関心事は〈時代診断〉としての個人化にあることを示す.次に,個別科学としての社会学が成立した時期の「個人」ないし「個人化」に比べ,彼の「個人化」においては,社会のさらなる分化の結果,個人は社会との関連づけの度合いが減少し,自己関連づけがより強化されたものとして描かれていることを示す.加えて,ドイツ社会学の実証研究において,個人化論は社会の構造変化にともなって生じた社会と個人の関係の変化,個人のあり方の変化を分析し考察する目的において,「理念型」と同様の機能を果たしうることを指摘する.
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ITO, M. (2008). The Concept of Ulrich Beck’s Individualization. Japanese Sociological Review, 59(2), 316–330. https://doi.org/10.4057/jsr.59.316
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