Abstract
生物は環境の変化に対して正確に応答することで環 境に適応し,恒常性を維持している.しかしながら, 生物のシステムを細かく見ていけば,人工的なシステ ムに比べばらつきが大きいことがわかってきた.例え ば,1 細胞計測が行われるようになることで,細胞ご とに応答がばらつくことが明らかとなってきた.この ように個々の細胞に着目すると大きなばらつきが存在 する中で,生物全体として環境に対してどのように正 確に応答しているのかは,未だ不明なことが多い. シグナル伝達にノイズが加わると,刺激強度に応じ た正確な応答ができない.それでは,ノイズが存在す る中でシグナル伝達経路はどの程度正確に応答ができ ると言えるのであろうか.情報理論はノイズが存在す る中での情報伝達量についての解析的枠組みを提供し ており1), 2) ,シグナル伝達経路に対しても適用するこ とが可能である.これまで応答のばらつきをノイズと 見なしてシグナル伝達経路の情報理論解析がなされて きた.応答のばらつきの原因には,同じ細胞の中の確 率的な応答のゆらぎ(細胞内変動)と細胞ごとの分子 の発現量の違いなど個性の違い(細胞間変動)の 2 つ が考えられる.細胞間変動と細胞内変動はそれぞれ外部ノイズ,内部ノイズとも呼ばれ,どちらも情報理論 解析においてノイズとして扱われてきた.しかし,細 胞間変動と細胞内変動は応答のばらつきとして同列に 扱うべきではなく,異なる性質を持つものとして区別 することの重要性が,1 細胞レベルの研究から明らか にされてきた3)-5) .そこで筆者らは細胞間変動と細胞 内変動を区別した情報理論解析を行い,細胞間変動は ノイズではなく情報伝達量を増やすのに寄与しうるこ とを示した6) .本総説ではシグナル伝達経路に対する 情報理論解析を概説した後,細胞間変動が情報量を増 やすメカニズムを示した筆者らの研究を解説する.
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WADA, T., HIRONAKA, K., & KURODA, S. (2021). Cell-to-cell Variability Serves as Information not Noise. Seibutsu Butsuri, 61(5), 288–292. https://doi.org/10.2142/biophys.61.288
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