Abstract
1 .はじめに 我々の生活の必需品となった二次電池は,電子機器から電 気自動車や電力貯蔵等の大型用途へと拡大している。なかで もリチウムイオン電池は,2018 年における世界の電池生産 量が約 100 GWh で,販売金額が約 2 兆 6,000 億円と見込ま れている。2020 年頃には約 140 GWh となり,約 3 兆 6,000 億円の巨大な基幹産業に成長することが期待されている。こ の背景には,自動車を取り巻く世界情勢が各国の厳しい環境 規制に対応するために,これまでガソリン自動車を中心とす る市場からクリーン自動車に移行をせざるを得なくなってき たことが挙げられる。 2018 年 (3 月期) のトヨタ自動車,日産自動車,本田技研工 業,マツダ,スバル,スズキ,三菱自動車の 7 社の研究開発 投資金額は,約 2 兆 8,000 億円で,電気自動車 (EV) やプラ グインハイブリッド自動車 (PHV) ,燃料電池自動車 (FCV) な どのクリーン自動車の開発が大きく進展している。自動車の 駆動システムは, 「ガソリンエンジン」から「モーター+電池」 へと確実にシフトしつつある。 しかし,電池は電気容量が大きくなるほど,熱暴走を起こ すリスクが高まり,また使用する電流値が大きくなるほど発 熱する傾向にある。特に自動車用の電池では,電池の安全性 確保の未熟さがクリーン自動車の本格的な普及を遅らせるこ とに繋がる。このため,電池の高性能化と低コスト化だけで なく,安全性や信頼性を確保しようとする意識が,日本や韓 国,中国,台湾といったアジア圏だけでなく,米国や欧州で も加わって高まっている。 筆者らは,従来の電極材料と比べて,数倍の高容量化が可 能なシリコン (Si) 系材料や硫黄系材料などに着目して,電池 の高性能化と安全性の両立を図るために,研究開発を進めて きた。本稿では,リチウムイオン電池の基本構成と熱暴走メ カニズムについて紹介するとともに,Si 系負極や硫黄系正極, 耐熱性セパレータなどを組み合わせて電池を作製することで,-20~80 ℃の幅広い温度範囲で充放電することができ,か つ釘刺し安全性試験や過充電試験にも耐えうる安全性を確保 した新しいリチウムイオン電池を開発したので紹介する 。 2 .リチウムイオン電池の基本構成と熱暴走リスクの 低減 リチウムイオン電池が商品化される前までは,携帯電話な どの小型民生機器用電源として,ニッケル・水素 (Ni-MH) 電 池やニッケル・カドミウム (Ni-Cd) 電池が広く用いられていた。 しかし,携帯電話に内蔵される RF(Radio Frequency) 回路や CPU(Central Processing Unit) などの電気回路を安定に動作さ せるには,3.2 V 以上の電圧が求められた。このため,起電 力が 1.2 V 系の Ni-MH 電池や Ni-Cd 電池では直列接続や昇圧 回路などが必要であった。 1992 年頃,我が国から単電池で 3.6 V 以上の起電力を有す るリチウムイオン電池が商品化され,携帯電話の世界的な普 及を牽引するとともに,その主流の電源となった。この電池 は,層状酸化物系正極とグラファイト系負極,ポリオレフィ ン系微多孔膜セパレータ,エチレンカーボネート (EC) 系電 解液, 安全回路などから構成され, 今日までの基本構成となっ ている。 電池の充電時には正極から電気伝導を担うリチウムイオン (キャリア) を放出して負極に挿入され,放電時には負極から リチウムイオンを放出して正極に挿入される (インターカ レーション反応) 。ただ,過充電されると負極上にリチウム デンドライトが析出するため,厳密な充電制御が求められる。 グラファイト系負極は,グラファイト粉末を樹脂系バイン リチウムイオン電池の熱暴走メカニズムと高安全性技術 向井 孝志 a, c ,境 哲男 b, c ,柳田 昌宏 c a ATTACCATO
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MUKAI, T., SAKAI, T., & YANAGIDA, M. (2019). Thermal Runaway Mechanism and High Safety Technology of Lithium Ion Battery. Journal of The Surface Finishing Society of Japan, 70(6), 301–307. https://doi.org/10.4139/sfj.70.301
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