Abstract
あとう 1.はじめに 生態系サービスは供給,調節,文化,基盤サービスに4分類さ れる。 そのうち, 文化的生態系サービス(以下, Cultural Ecosystem Service を CES と記載)とは,文化的・知的・精神的な刺激, レ クリエーション・エコツーリズム・バードウォッチング,科学的 発見,霊的な価値,教育や信仰,審美的喜びなど,生態系から得 られる非物質的な恵みとされる 5) 。 CES の評価手法に関し,2009 年以降,論文数が増加し,住民 からヒアリングなどによる定量化など知見が蓄積されつつあるが, 現在に至るまで明確な基準の設定を含めて 3, 5) ,評価手法の枠組 みが確立されていない 4) 。 CES の供給対象である場所の特徴を指 標化するとともに, CES を受益する人々の認識や価値観を踏まえ た調査手法の確立が求められている。 一方, 「ユネスコ 世界宣言」によれば,文化とは,社会あるい は社会集団の精神的・物質的・知的・感情的特性の組み合わせと される 16) 。そのため,文化の多様性を反映した CES 評価手法が 必要になる。また,CES に含まれる多機能間のトレードオフやシ ナジーを把握するため,多面的指標を有する評価手法が言及され ている 15) 。 さらに, CES の包含する審美的価値や社会的関係性, 教育的価値が報告され,回答者の社会的属性の違いによって, CES の機能の括りに特有のパターンが示された 12) 。 したがって, CES の機能を一面的に捉えるのではなく,CES がもつ機能の多 面性に着目し,その相互関連性(正負の相関)を把握する評価手 法を論議する必要があると考えられる。 CES に対する評価は, 人々の価値観や行動などに強く結びつき, 個々人によって異なるとされる 5) 。CES の評価に影響を及ぼす要 因として,評価主体の過去の体験などに基づく価値観 9) ,個人の 経験や認知の度合い 1) , 対象地との距離による影響 1,10) が指摘され ている。 本研究では,CES に対する統合的評価手法として多面的に重要 度の評価を試みた先行事例 1, 11) を参考としつつ,CES の多面的機 能間の重要性の差異に着目した。なぜなら,緑地空間の持つ多様 性を反映した CES に対する評価において,個別の側面に偏重し た統合性の喪失や,機能間のトレードオフに留意しつつ,機能間 の優先順位の検討が欠かせないと判断されるからである。 そこで, CES を受益する人々の認識に焦点を置き,CES に対し多面的に 重要度の評価を行い,重要度の相互関連性を把握した。さらに, 既往研究を参考に, 回答者の属性 (公園との距離, 体験など) 1,9,10) , 文化的サービスを推進する手法(魅力を共有する手段,仕組みづ くりの担い手)に対する態度が 5) ,相互関連性に及ぼす影響を検 証した。そして,緑地空間の CES を構成する各機能間の相互関 連性に影響する要因を考慮した CES の評価手法を確立するため の基礎的知見を得ることを研究目的とした。 2.調査方法 現代社会において,都市郊外に立地する里山空間がもたらす CES の評価が求められている 7) 。同時に,里山に対する住民の保 全参加行動を促す契機としても CES が着目されている 8) 。 そこで, 調査対象選択にあたり,里山的土地利用が数世代前まで行われ, 現在は公園として利用され,公園の運営管理に市民団体が関わっ ている総合公園程度の大規模都市公園を条件とした。調査対象公 園として,神奈川県川崎市にある生田緑地,都立狭山自然公園を 構成する 2 つの公園,野山北六道山公園(東京都武蔵村山市)と 狭山公園(東京都東村山市)とした(図-1,表-1)。 調査対象者,調査方法,調査日時に関しては,公園利用者を対 象とし,アンケート調査用紙を用いた郵送法により,2014 年 11 月中旬から 12 月中旬にかけて土・日曜日に実施した(表-2)。 有効回答数のうち,公園別にみると,生田緑地が 249 件(回収率 が 35.8%),野山北六道山公園が 197 件(回収率が 27.2%),狭山公 園が 133 件(回収率が 44.3%)であった。分析に際しては,各公園 のボランティア活動者や公園管理関係者を除いて,生田緑地が 230 件,野山北六道山公園が 156 件,狭山公園が 129 件,合計 東京郊外に立地する都市公園を事例とした文化的生態系サービスに関する評価手法の検討 Abstract: Based on previous research of the evaluation method of cultural ecosystem service (CES), this study examined a trial evaluation method grasping the multi-functionality of CES provided by urban parks located in the suburb of Tokyo metropolis. This method was focusing the relative importance of the multi-functionality by selecting the most valuable and the second valuable functions with the mail-back questionnaire survey. Result showed the importance of some function affected by the socio-demographic attributes of users and their attitude of CES. The similarities and differences of mutual relationships among functions were observed in these parks. Also, these relationships were affected by the socio-demographic attributes of users and their attitude of CES. There supposed to be a need to establish an indicator characterizing the supply function of CES of the park as well as to a multi-tiered evaluation method according to the proximity to the park. In order to understand the dynamics of changes among factors affecting CES evaluation, an evaluation method that include the relationship between supplier and receiver of CES should be developed.
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KOBAYASHI, A. (2017). A Study on Evaluation Method of Cultural Ecosystem Services Provided by Urban Parks in the Suburb of Tokyo Metropolis. Journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture, 80(5), 521–526. https://doi.org/10.5632/jila.80.521
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