Abstract
小 林 富 雄 【要 旨】 本稿では,日本のフードサプライチェーン (FSC) における返品慣行の問題,そして外食産 業の食品ロスの 3 分の 2 を占める食べ残しの持ち帰りである「ドギーバッグ」の問題を取りあげ,過度 なリスク回避行動から適切なリスクシェアリングへ行動変容を促す施策の実態を明らかにする。 世界各国では,食品ロス発生抑制に関する立法を契機に,行政が調整しながら具体的な方法が検討さ れている。しかし,多くの場合は法律が施行されるよりはるか以前から,自発的に方法が模索されてお り,あくまでも立法はその後押しに過ぎない。 日本では,諸外国と比べると強い罰則規定がある食品リサイクル法が 2001 年に施行された。しかし, その対象は事業系に限定され,かつ農業部門は除外されていた。2019 年に施行された食品ロス削減推 進法は,リサイクル法が対象としていない領域を補完し,ソフトロー (Soft Law) によるリスクシェア リングを促す効果が期待される。 キーワード:フードサプライチェーン (FSC),3 分の 1 ルール,ドギーバッグ,リスクシェアリング 1.は じ め に 1. 1 食品ロスの現状と分析対象 フードビジネスから発生する事業系食品ロスは,景気 動向に発生量が左右されながらも毎年 300 万 ton 強で推 移し,2017 年度は 328 万 ton と前年度比 93 % であっ た 1) 。その内訳は,外食産業 39 %,食品製造業 37 %, 小売業 20 %,卸売業 5 % と外食産業が最も多い。一方, イギリスの The Wast and Resource Action Programme (以下,WRAP) によると同国の Food Waste のフード サプライチェーン (FSC) 上の内訳は,食品製造業 52.3 %,小売業 9.6 %,外食産業 38.1 % である 2) 。イギリス では卸売業が日本ほど発達しておらず,小売業の寡占化 と PB (Private Brand) 化が著しく進んでいる。このよ うな状況では,製造業は直接巨大小売業と交渉しなけれ ばならず,欠品リスクや在庫リスクがメーカーに直接押 しつけられる「優越的地位の乱用」がしばしば問題とな る 3) 。一方,外食産業の食品ロス発生割合が多いことは, 国際的には大きな相違はみられない。しかし,食べ残し を持ち帰る「ドギーバッグ」が日本では普及していない, 海外では食べきれない量を提供することが「おもてな し」とされることがあるなどして,その実態は商慣習や 食文化を通じて多様性を帯びている。 本稿では,日本でも特に課題となっている「3 分の 1 ルール」のような製造業から小売業に至るフードサプラ イチェーン (FSC) 間の取り引きの問題,そして日本の 外食産業の食品ロスの 3 分の 2 を占める食べ残しの持ち 帰り「ドギーバッグ」に関する課題を取りあげる。おり しも COVID-19 対策により外食需要が家庭内 (内食) へ急速に移行しており,長期的には事業系全体では減少 する可能性もあるが,短期的には FSC の販路 (チャネ ル) 変更により在庫管理が混乱し,増加傾向をみせてい
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Kobayashi, T. (2020). Measures against Food Loss and Waste in the Retailer and Hotel-Restaurant Industries : Material Cycles and Waste Management Research, 31(4), 285–293. https://doi.org/10.3985/mcwmr.31.285
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