Abstract
図 1 析出強化量と析出粒子半径との関係を示す模式図. ま て り あ Materia Japan 第54巻 第 1 号(2015) ナノ析出を利用した鉄鋼材料の 高強度化と高延性化 紙 川 尚 也 1) 宮 本 吾 郎 2) 古 原 忠 3) . は じ め に 金属材料の高強度化と高延性化の両立は,構造用金属材料 の材料開発において常に求められる命題の一つである.金属 材料の塑性変形は,原子の拡散が顕著に生じる高温域での変 形でない限り,主として転位のすべり運動により支配される ため,転位運動の障害物を微細組織中に導入することにより 金属材料の力学特性を変化させることができる.転位運動の 障害となる格子欠陥としては,すべり面上に存在する林立転 位,固溶原子,析出物,分散粒子,結晶粒界,異相界面など がある.実用金属材料では,これらの格子欠陥の存在状態を 精密に制御することにより,材料の力学特性の制御が図られ ている.特に,鉄鋼材料は他の金属種とは異なり,フェライ ト変態,パーライト変態,ベイナイト変態,マルテンサイト 変態という種々の相変態現象を加工熱処理により発現させる ことができるという特長を有している.実用鉄鋼材料では, この利点を最大限に活かして,合金設計と塑性加工,相変 態・析出,回復・再結晶を組み合わせることによって,多種 多様な材料組織の精緻な制御が行われている. その中でも,鉄鋼材料の組織中に直径数ナノメートルの微 細な合金炭化物を析出させて材料特性を改善する手法,いわ ゆる,ナノ析出の利用が近年特に注目を浴びている.著者ら の研究グループでは,ナノ析出による鉄鋼材料の高強度化お よび高延性化とその機構解明を目的として現在研究を行って いる.本稿では,鉄鋼材料におけるナノ析出の利用の利点に ついて簡単に説明した後に,ナノ析出組織を有する鋼の力学 特性に関する研究成果を紹介していく. . 鉄鋼材料におけるナノ析出の利用 金属組織中に分散した析出粒子により達成される析出強化 量は,析出物内部の摩擦応力,整合ひずみ場,剛性率効果, 粒子切断によって形成される界面エネルギー,規則構造を持 つ粒子による規則硬化,積層欠陥エネルギーなどの種々の因 子の影響を受ける (1)(2) .例えば,析出物内部の摩擦応力によ る変形抵抗を考えた場合,運動転位が析出粒子を通過するた めに必要な臨界分解せん断応力は,析出粒子の体積率の 1/2 乗に比例して増加し,また,析出粒子の体積率を一定とした 場合,析出物の半径の関数として図に示すような特徴的な 傾向を示す (2)(3) .析出物の半径が小さい場合,運動転位は析 出粒子を切断しながら通過することができる(図(a)).こ のとき,析出物の半径の 1/2 乗に比例して強度は増加す る.析出物の半径が大きくなると,臨界分解せん断応力が最 大値を示した後に,析出物の半径に反比例して低下していく
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Kamikawa, N., Miyamoto, G., & Furuhara, T. (2015). Improvement of Strength and Ductility of Steels Using Nano-precipitation. Materia Japan, 54(1), 3–11. https://doi.org/10.2320/materia.54.3
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