Abstract
1 .はじめに 透明導電膜は,ディスプレイ,タッチパネル,太陽電池な どの幅広い分野で使用され,全ての分野に共通して高透過か つ低抵抗な性能が求められる。また,製造の観点から,低コ ストで安定生産を可能にする材料が求められている。ディス プレイの傾向としては,高精細,低消費電力が差別化のキー ワードになっており,最新の携帯端末では 300 ppi 以上の高 精細なディスプレイを搭載する機種が増えている。このため, 透明導電膜には,パターニングの容易性と光損失を低減させ るための高透過特性が必須である。 現在,ディスプレイに多く使用されている透明酸化物薄膜 材料は,酸化スズドープ酸化インジウム (In O-SnO ,通称: ITO) である。In は希少金属で高価ではあるが,ITO は現在 知られている透明導電膜の中では最も抵抗が低く,成膜条件 も容易に実現できるものであるため,広い分野で使用されて いる。ITO の代替材料も多く研究されているが,成膜条件が 困難なことや大型化が困難などの課題があるため,生産へ移 行できているものは限られている。 本稿では,ITO のスパッタリング法による成膜パラメータ の影響と,ITO ターゲットへの添加物による ITO 膜への影 響に関して解説する。 2 .透明導電膜の成膜方法 透明導電膜の作製方法には,スプレー法,塗布法,CVD (Chemical Vapor Deposition) 法などの化学的作製法と,真空 蒸着法,スパッタ法などの物理的作製方法に分類することが できる。 化学的作製方法は,塩化物の加水分解や有機化合物の熱分 解反応により酸化物半導体薄膜を作製する方法で,工程が簡 単で装置が安価というメリットがある。しかしながら,通常 400 ℃程度の反応温度を必要とするため,耐熱性の低い基板 への適用が困難であること,化学量論組成から少し還元気味 にすることで酸素空孔などの真性欠陥がドナー準位を形成し 電気伝導性を持つ酸化物半導体材料では組成の最適化が困難 であること,有害ガスを発生することなどの問題がある。一 方,物理的作製方法は,成膜中に真空雰囲気への導入酸素量 を調整することにより,組成の最適化が可能であること,耐 熱性の低い CF(Color Filter) 基板や TFT(Thin Film Transistor) 素子,フィルム基板などへの適用が可能であることなどのメ リットを持つ。そのため,LCD(Liquid Crystal Display) をア プリケーションとした透明導電膜の作製では,主に真空蒸着 法やスパッタ法が採用されている。特にスパッタ法は真空蒸 着法に比べ大型基板への均一成膜や膜特性の制御に優れてお り,本節ではスパッタ法を中心とした透明導電膜の作製方法 を扱う。 2.1 成膜パラメータ 酸化物半導体薄膜を作製する際の主なパラメータには,酸 素導入量,不純物添加量,成膜温度,スパッタ電圧があり, それぞれのパラメータの特徴を ITO 中心に説明する。 2.1.1 酸素導入量 酸化物半導体薄膜材料は化学量論組成から少し還元気味に することで酸素空孔などの真性欠陥がドナー準位を形成し電 気伝導性を持つため,薄膜の組成を最適化するためには酸素 導入量のコントロールが重要なパラメータとなる。 ITO の 場 合, 酸 素 導 入 量 の 増 加 に 伴 い 化 学 量 論 組 成 の In O に近づくため結晶格子が整い移動度の向上が見られる が,酸素空孔による自由電子の放出が低減し,さらに酸素過 多な領域では,In を置換している Sn が酸化しキャリア密 度が低下するため,適切な酸素導入量をコントロールする必 要がある。 2.1.2 不純物添加量 不純物半導体のドナーとして添加する不純物は,置換型で 結晶格子に入り込み自由電子を放出することで電気伝導性を 得るため,置換型で結晶格子に入り込まない不純物は電気伝 導性に寄与せず,格子散乱などにより移動度が低下し逆に電 気伝導性を劣化させてしまう。特に AZO(ZnO-Al O ) の不純
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ARAI, M. (2013). Process and Film Properties of Transparent Conductive Oxide (ITO). Journal of The Surface Finishing Society of Japan, 64(7), 396–399. https://doi.org/10.4139/sfj.64.396
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