Abstract
1.はじめに 本研究の目的は, ソーシャルキャピタル (社会関係資本) 理論に基づいて,起業家出身大学・出身企業とスタートア ップの地理的近接性が成長に及ぼす効果を明らかにするこ とである.本研究では成長を成長規模及びスケールアップ として議論していく.スタートアップとは,ベンチャーキ ャピタルなどの投資家から株式により資金調達を行い,短 期間で急成長を目指す起業家企業と定義する.銀行融資で 資金調達を行い, 成長よりも事業継続を重視する中小企業・ 自営業は,本研究の対象外とする.また,急成長を目指す ために手掛ける領域は既存ビジネスではなく,社会課題を 解決してイノベーションを起こすような分野になるためリ スクは高い.スタートアップの成長ステージは,スケール アップを本格化させる後半のステージを本研究の対象とす る.また,スタートアップは,あらゆるリソースに乏しい にも関わらず高成長が求められる.そこで,外部リソース を如何に上手く動員できるかがスケールアップのポイント となる.ここで,近接性が重要な理由は,起業家出身大学・ 出身企業は,資金・人材供給・知財戦略・暗黙知の伝承な どの公式・非公式の様々なリソース支援を行っている 1) 2) か らである.そのため,出身大学・出身企業との近接性が, リソース動員を容易にし,スケールアップを促すと主張す る. 研究の背景は,国が将来の大企業候補であるユニコーン (時価総額 1,000 億円以上の未上場企業)の育成に力を入 れているところにある.2025 年までにユニコーン・上場ベ ンチャー企業を 50 社創出(2019 年度末で 16 社)という目 標 3) を設定,政府は規模の大きい会社の創出に政策の重点 を置いてきている.ユニコーンのような急成長企業は,非 高成長企業と比べて新規雇用増の大きなシェアを占める 4) , そのため,ユニコーンの育成は政策上重視されている.こ のユニコーンは,都市をベースとしたスタートアップエコ システム (1) から生み出される.国はスタートアップ創出の 具体的施策としてスタートアップエコシステム拠点都市の 整備を進めている.更に都市の地区レベルでは,都市再生 特別地区(以下:特区)を活用した起業家支援施設の整備 等も行われている (2) .このスタートアップエコシステムは, ベンチャーキャピタル(以下 VC) ,大学・大企業,スター トアップなどのアクター (行為者) よって構成されている. スタートアップと関係するアクター間での成長メカニズム の研究では,VC とスタートアップの地理的近接性が成長 に及ぼす影響の研究蓄積は進んでいる 5) . 一方で,大学・大企業との地理的関係性の重要性を主張 する研究 6)7) は多いものの, 実際に距離を測ってその成長効 果を実証した研究はない.本研究では 3km 間隔の距離帯毎 の成長効果を具体的に検証していく.また,特区提案にお ける起業家育成のための支援施設整備等においても計画内 容に関して具体的な利用内容も曖昧であり,さらに利用形 態に至っては多くの計画において記述されていない 8) など の課題が指摘されている.本研究のオリジナリティは,成 長リソース(大学・企業)とスタートアップの近接性が, 成長に及ぼす具体的な距離帯を明らかにすることである. また,モデル上の特徴としては空間誤差モデル(SEM : Spatial Error Model)によって空間的自己相関が疑われる欠 落変数バイアスの問題に対処する.加えて,成長プロセス の中で脱落するサンプルによって生じるセレクションバイ に対しては,逆確率重みづけ法(IPW:Inverse Probability Weighting)で頑健な推定を行う.本研究の成果としては, 都市計画の中での産業支援政策・イノベーション促進政策 等への貢献をあげる.リソースとの近接性がスタートアッ 起業家出身大学・出身企業との近接性がスタートアップの成長に及ぼす影響 The purpose of this study is to find out that the geographic proximity of the startup to the entrepreneur's home university/firm influences the growth of the startup. Entrepreneurial university and firm are social capital for procuring external resources. The mission of a startup is to solve a social problem, to cause innovation, and to achieve high growth in a short period of time. On the other hand, early-stage startups lack resources for growth. Entrepreneurs need to mobilize resources through social capital, which is a social connection. In this paper, we argue that for startups to grow, simply locating in a cluster of startups is not effective, and that proximity to resources is a growth factor.
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Anai, H., & Shibasaki, R. (2022). The Effect of Proximity to Entrepreneurial Universities and Companies on Startup Growth. Journal of the City Planning Institute of Japan, 57(1), 228–239. https://doi.org/10.11361/journalcpij.57.228
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