Abstract
ま て り あ Materia Japan 第56巻 第 1 号(2017) 第一原理計算に基づく転位構造解析と合金設計-マグネシウムの延性向上への取り組み-都 留 智 仁 , . 緒 言 マグネシウム(Mg)は構造用金属材料で最も比重が低く, 地球上に豊富に存在する元素であることから,省エネルギー 社会の実現において軽量構造材料の有望な候補として期待さ れている (1) .とりわけ輸送機器では,自動車の車体軽量化に よる燃費改善効果が高く(100 kg 当り 0.4 0.8 L (2)),車重比 率の高いフレームや駆動系統などのより多くの構造部材で Mg 合金の応用が望まれている.しかしながら,Mg 合金は 六方晶構造(HCP)に由来する塑性異方性により変形能に乏 しく,成形性,疲労強度,衝突安全性の向上が実用化に向け た重要課題となっている. 構造材料の機能向上のアプローチとして, 「組織制御」と 「合金化」が単相の材料設計の基礎として古くから広く行わ れてきた.組織制御に対して,加工による転位密度や結晶粒 径がもたらす機械的性質への影響は体系的に理解され,組織 制御による材料開発が積極的に行われている.Mg 合金に対 する組織制御では,微細粒化によって強度と延性が向上する ことが知られており,双晶界面の減少や非底面すべりの活性 化によることが指摘されている (3)(4) .しかしながら,Mg 合 金では立方晶合金に比べて加工性が極めて低く,一般に加工 時の温度や集合組織の制御に多くの困難を伴う. 合金化による材料設計は,強度や靱性などの機械的性質, 融点などの熱力学的性質,耐食性などの化学性質の機能向上 を目的として行われる.Mg 合金においては,Mg Al Zn に よる AZ 系合金や Mg 遷移金属 希土類元素による長周期積 層構造を有する合金が開発され (5) ,Mg 合金の欠点である腐 食性や可燃性の改善が図られてきた.一般に Mg 合金は低 温での加工性が乏しいことから,加工による組織制御に先立 つ機械特性向上のための積極的な合金設計が特に重要とな る.近年,六方晶 Mg に対する二元系希薄合金の機械特性 の体系的な実験により,Y,Ce などの一部の合金元素では, 0.05 atのごく微量な添加によって Mg 合金の延性を大き く向上させることが知られてきた (6) .だたし,同様の効果を 生む元素の多くが希土類元素であり資源的に希少かつ高価な ことから,延性向上のメカニズム解明とともに,代替材料の 開発が期待されている. 希少元素の代替材料開発は元素戦略の重要な研究であり, 原子・電子構造に立脚した構造材料に対する強さとねばさの 両立に向けた取り組みが推進されている (7) .合金元素と機械 特性の関係は,通常固溶原子と転位の相互作用による強化機 構で説明される.Mg 合金においても Mg 3Al 1Zn(AZ31) 合金の Al や Zn などの多くの合金元素で強化が生じる.そ の一方,通常の強化機構では Mg 合金の塑性異方性にわず かな変化を生じるのみであり,強化は実現されるが延性は依 然として低い.Mg 合金の機械特性に関する一つの特徴とし て,高温で塑性伸びが大きく上昇することが知られており, その要因として高温域における非底面すべりの活性化である と考えられている (8) .添加元素による延性の向上には粒径の 変化などの組織変化が寄与しないことから,微細粒化と異な るメカニズムとして,高温変形で生じるような非底面すべり が延性向上に重要な役割を果たすと考えられる.本稿では, 転位論と第一原理計算を用いて,合金化による機械特性への 影響を非経験的に評価するための合金設計手法を提案すると ともに,具体的な対象として,Mg 合金の延性向上のメカニ ズムと合金設計指針について紹介する. . 積層欠陥エネルギー Mg などの六方晶金属の変形は底面,柱面,錐面のすべり 系と双晶によって生じる.六方晶 Mg 合金では,底面すべ
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Tsuru, T. (2017). Alloy Design and Mechanical Properties: First-principles Calculations of Dislocation Core. Materia Japan, 56(1), 5–13. https://doi.org/10.2320/materia.56.5
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