Cellulose Nanofiber

  • Sakakibara K
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Abstract

1 .はじめに 最近では,化石資源由来の高分子材料の生分解されないゴ ミとしての地球上への蓄積,焼却処分による大気中の CO 濃度の増加による地球温暖化・気候変動の可能性,海洋マイ クロプラスチック等の環境問題がクローズアップされている。 したがって,SDGs(2015 年に国連で採択された持続可能な 17 の開発目標) の観点からも,再生産可能で大気中の CO の 固定化物である植物バイオマス由来材料の量的・質的な有効 利用・高度利用の拡大が求められている。しかし,先進国で は人口減少による住宅着工率の低下,電子メディアの拡大に よる印刷情報用紙の消費量の減少が続いており,住宅建材や 紙など従来型の植物,特に森林産業の根幹である木質バイオ マスの利用量の,今後の増加は見込めない。 植物細胞壁主成分は光合成された多糖であるセルロース, ヘミセルロースと,複雑な化学構造を有する高分子のリグニ ンを主成分としている。紙パルプ産業では,針葉樹および広 葉樹木材チップから効率的で環境負荷の低いパルプ化および 漂白プロセスを構築している。 製造された漂白木材パルプ (セ ルロース含有率はパルプ化法により 80 ~ 95% に制御) は製 紙用,レーヨン繊維製造用,各種セルロース誘導体類製造用 等に利用されてきた。しかし,パルプの主要用途である印刷 情報用紙の国内需要は減少しており,それ以外の用途も今後 大幅に増加することは期待できない。そこで,安価な製紙用 の漂白木材パルプ (約 60 円/ kg) から各種ナノセルロース類 への調製法,そのナノ構造解析,ナノ微細化機構,各種汎用 および先端材料への利用に向けた基礎および応用研究が世界 レベルで進められている 。 20 世紀後半までは,有機化学反応・分析手法を根幹とす る分子レベルの各種有用有機物質の合成に関する研究開発, あるいは印刷用紙や段ボールのようなミクロンサイズ以上の 巨視的な材料の設計・構造および物性解析が中心で,その中 間であるナノ材料が注目されることはなかった。その理由と して,ナノサイズの物質の正確な構造解析方法が少なかった こと,ナノ材料の機能を利用した製品が少なく,注目されな かったことも要因であった。しかし,1990 年代になり,カー ボンナノチューブ,フラーレン,グラフェン,デンドリマー, 金属ナノ粒子,ナノクレイなど各種ナノ材料が見いだされ, その特異的な機能が明らかにされた。関連して,クライオ電 子顕微鏡,走査透過型電子顕微鏡 (STEM) ,原子間力顕微鏡 (AFM) 等の新しい可視化装置,レーザー粒度分布測定装置, 水晶振動子マイクロバランス (QCM) など各種ナノ構造解析 手法も開発された。そのような背景から,セルロース由来の ナノ素材についても,調製方法や利用に関する研究が今世紀 に入って大学や公的研究機関で精力的に検討され,様々な企 業もナノセルロースの実用化に向けた研究開発を進めている。 2 .植物セルロース繊維から叩解パルプ,ミクロフィ ブリル化セルロースへ 陸上の植物細胞壁中では,直鎖状のセルロース分子が 20 ~40 本規則的に束ねられ,約 3 nm と超極細均一幅で,長さ 数 μm に至る結晶性の「セルロースミクロフィブリル」とい う天然のナノファイバーを共通の最小のエレメントとしてお り, 長さ方向で約 140 GPa の高い弾性率を有している (図 1) 。 このように鉄筋のような役割のセルロースミクロフィブリル は, 親水性と疎水性を両有する非晶性多糖であるヘミセルロー スと,ベンゼン環を有し疎水性で不均一な化学構造を有する リグニンとともに分子レベルからナノレベルの天然の耐水性 で高強度の複合体構造を形成して細胞壁中に充填されている。 したがって,単離-精製,すなわち,パルプ化-漂白工程を 経た,幅約 0.03 mm,長さ 1~3 mm の 1 本のパルプ繊維中に は無数のセルロースミクロフィブリルが含まれている 。 製紙工程では従来から,含水パルプ状態で機械的なせん断 力を作用させる叩解処理により,繊維表面,繊維内部にセル ロースミクロフィブリル構造に基づく部分的フィブリル化 (毛羽立ちや空隙構造の形成) によって紙の物性を制御してき た。高度に叩解したパルプからは透明度が高く,高密度のグ ラシン紙,トレーシングペーパー,コンデンサーペーパー等 が製造されていた。しかし,高叩解パルプは含水状態では, 高度に膨潤しているために抄紙工程での脱水効率が低く,抄 セルロースナノファイバー 磯 貝 明 a a

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Sakakibara, K. (2018). Cellulose Nanofiber. Seikei-Kakou, 30(8), 424–428. https://doi.org/10.4325/seikeikakou.30.424

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