Abstract
1.�はじめに 我が国の海岸線延長は約 35,000 ㎞と世界でも有数の長さを有 し,泥浜,砂浜,礫浜,磯浜,海蝕崖などの多様な海岸形態が存 在する。一方で海岸線のすぐ背後に山が迫る国土狭小な地形条件 のため,平地と海を擁する沿岸域は古くから産業や交通の拠点と して,国土の中心的な役割を果たしてきた 2) 。しかし,高度経済 成長期以降の沿岸域における高密度な開発や,侵食対策としての 護岸工の設置,オフロード車の乗入れに見られる無秩序な利用に よる海岸環境の荒廃が問題視されるようになった 6) 。その要因と して,海岸に対する風景観の喪失が指摘されている。西田 8) は, 瀬戸内海を事例として,古来,日本人の海岸風景に対する風景観 は多彩で原風景とも言うべき身近な存在であったが,近代以降, 白砂青松に代表されるアノニマスな海岸景の定型・類型化(慣用 化)を経て,徐々に海岸風景へのまなざしが失われたことを示し た。 このような風景観の慣用化の弊害として, 「白砂青松」 の創出を 称した海岸整備事業が,地域の自然条件を考慮せずに全国的に行 われ 12) ,海岸林の造林が自然海岸の減少を助長する要因ともなっ た 14,17) ことが指摘されている。総理府が行った「海辺ニーズに関 する意識調査」 15) における「海のイメージ」では,最も多くの回 答者に指示されたイメージとして, 「自然のままの砂浜海岸 (白砂 青松) 」 という回答が7割を占めていたが, 日本の自然海岸におけ る砂浜海岸の割合は1割程度にすぎない点から,そもそも海岸環 境に対する関心が薄れている可能性を指摘していた。また,白砂 青松とされる海岸林のほとんどは,植林により本来の自然海岸を 改変して形成された二次的自然であるにもかかわらず,自然海岸 とみなされている現状や,特に戦後集中的に整備された鬱蒼とし た海岸林が海と人とを物理的にも精神的にも切り離している点や, そもそも自然海岸の定義の曖昧さから,後背地との連続性を無視 した沿岸域開発が行われてきたことについて,疑問が呈されてい る 6,14) 。風景は,社会背景によって「制度化」された規範として 生成し 10) ,人々の風景観が国土保全に規範的役割を果たした 7) と 指摘されていることから,自然海岸の減少や海浜地の無秩序な利 用による荒廃 6) が指摘されている現在,海岸に対して抱く風景観 として「心象風景」を把握することは重要である。 心象風景に関する研究としては,これまで多くの成果が蓄積さ れ,転居などにより居心地の良かった場所や都市が経験のまとま りとして束ねられること 20) ,人々が感動する自然風景は夏と秋に 経験されること 1) ,個人背景のなかでも自己形成期の体験が心象 風景に影響を及ぼすこと 16) ,メディアによる風景体験が没場所性 を生む要因となっていること 11) ,などが明らかとなっている。一 方,海岸の心象風景を扱った研究に注目すると,前述の西田 8) , 齋藤 12) , による伝統的集団表象としての海岸風景に関する研究 や,三溝ら 13) による砂浜海岸を対象にした伝統的海浜と大学生の 心象風景の比較研究,伊藤 3) による海岸林を対象とした風景生成 過程に関する研究などがあげられるが,まだ数は少なく,広く現 在の海岸に対する心象風景を扱った研究はみられない。また,伝 統的風景観を規範としその変容について考察されているが,特に 砂浜海岸においては近年, 東日本大震災の教訓もふまえて, 防災, 生物多様性,レクリエーションといった生態系サービスの観点か ら,後背地との連続性を維持した,海岸林を含めた人為的改変が 加えられていない砂浜海岸(主として砂浜の背後に海岸草原を形 成する海岸砂丘を伴い,内陸に行くに従い徐々に海岸林へと遷移 していく海岸。以下,本来的砂浜海岸)に新たな価値が見いださ れている 5,6,9) 。従って,伝統的風景観を規範とする従来の視座に 加え,本来的砂浜海岸を規範とした視座が今後重要となる。 本研究では, このような視座から, 広く海岸に対して抱くイメー ジを心象風景として,どのように海岸空間を認識しているのか, その構図や構成要素といった心象風景の形象を描画法から把握す ることを目的とし,さらに居住経験や体験時期などの個人背景と 心象風景との関連や,メディアの影響などについて考察した。 大 学 生 の 海 岸 に 対 す る 心 象 風 景 の 形 象 に つ い て Study of Mindscape figure of University students for coastal landscape Abstract: The coastal line of our country is long, approximately 35,000km, and various forms such as a muddy beach, a sandy beach, a rocky beach and a cliff. The coastal area was very important area for our life, industry, transportation, etc. from ancient time. It is important to understand "the mindscape" which a modern Japanese holds for coastal landscape because of the decrease of the natural coast and the terrible recreational use of the coastal area. In this study, it was intended to identify the structure of coastal "mindscape" and factors that would influence their mindscape. The questionnaire survey was conducted to graduate and undergraduate students from August to October 2010. The questionnaire was consisted with two main part, survey about figure of the coastal mindscape and individual background of respondents. As a result, the "sandy beach" and sea were the major component of mindscape. Because most respondents enjoyed sea bathing as recreational use, it was guessed that the viewpoint from the beach were dominated and inland area, like coastal dune, was not described. About the mindscape of half respondents were influenced by real scenery they had seen, but the remaining respondents were influenced by some kind of media such as photographs or TV programs.
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MATSUSHIMA, H., OIKAWA, M., & UEDA, H. (2012). Study of Mindscape figure of University students for coastal landscape. Journal of The Japanese Institute of Landscape Architecture, 75(5), 537–540. https://doi.org/10.5632/jila.75.537
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