Abstract
1 .はじめに 金属酸化物 (以下,酸化物) は,金属元素およびその価数に よって性質が大きく異なり,絶縁体~半導体~超電導体,反 磁性~強磁性,黒色~透明など,物性のバラエティが極めて 富んだ物質である。その機能と応用の可能性は,セラミック スからファインセラミックス,エレクトロニクス分野に至る まで現在も広がり続けている。酸化物 / 水酸化物を水溶液か ら基板に成長させる電解析出技術は,1980 年頃から研究さ れ始めており ,気相成長法にはない特徴を有するため,今 日まで活発な研究開発が行われている。その主な特徴は, (i) 化学反応 (電解電位) や反応速度 (電解電流) を高精度に制御可 能, (ii) 膜厚と形態制御が容易, (iii) 複雑な形状やマイクロ パターンへの製膜が可能, (iv) 製膜雰囲気は低温 (100 ℃以下) かつ常圧下, (v) 低コストで大面積化が可能,などである。 これまで電解析出法で得られている酸化物 / 水酸化物を 図 1 の周期表に記してある。特に 3d 金属は,対応する金属 イオンが弱酸~中性水溶液中で比較的安定であり,また水酸 化物イオン (OH ) と反応しやすいため,種々の酸化物が得ら れている 。これら酸化物の電解析出には,主に 2 通りの手 法が用いられている。つまり, (i) 「溶存化学種の還元反応 による水酸化物イオンの生成およびそれに伴う金属イオンの 水酸化反応」と (ii) 「安定金属イオンの酸化反応による不安 定金属イオンの生成およびそれに伴う金属イオンの水酸化反 応」である。詳細は次節で述べるが,いずれにおいても生成 した水酸化物は (式 1) に示すように脱水反応を引き続きおこ し,酸化物となる (水酸化アルミニウムなど 100 ℃以下では 脱水反応が起こりにくいものもある) 。 M n +nOH → [M (OH) n ] →MO n/ +n/2H O ………(1) 目的の酸化物を得るにはどのような電解浴や手法が適して いて,基板に電位をいくら印加すればよいのか,という指針 を与えてくれるのが電位-pH 図である。金属 (錯体) イオン の還元反応を扱う金属の電解析出と比較して,酸化物の電解 析出では金属イオンだけでなく溶存化学種の酸化 / 還元反応 を駆使し,価数の異なる複数の酸化物の中から目的の酸化物 だけを析出させる必要もあるため,電位-pH 図が果たす役 割はよりいっそう大きいと言える。本稿では,手法 (i) を用 いる電解析出として酸化亜鉛 (ZnO) を,手法 (ii) では酸化銀 を例にとり,酸化物の電解析出における電位-pH 図の活用 を紹介する。 2 .酸化亜鉛の電解析出 六方晶ウルツ鉱構造型の酸化亜鉛 (ZnO) は 3.3 eV の禁制帯 幅と 59 meV の励起子束縛エネルギーを有する n 型半導体で あり,透明電極材料や紫外発光材料としての応用が期待され ている。図 2 に Zn-H O 系の電位-pH 図を示す 。Zn の電子 配置は 3d 4s の閉殻構造を有するため,安定なイオンおよ び酸化物 / 水酸化物は Zn と ZnO/Zn (OH) だけであり,3d 金属の中で最もシンプルな電位-pH 図となっている。Zn から Zn (OH) への水酸化は酸化還元反応を伴わないため, 金属酸化物電析への電位-pH 図の応用 品川 勉 a ,伊㟢 昌伸 b a (地独) 大阪市立工業研究所 電子材料研究部 (〒 536-8553 大阪府大阪市城東区森之宮 1-6-50) b 豊橋技術科学大学 機械工学系 (〒 441-8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘 1-1)
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SHINAGAWA, T., & IZAKI, M. (2013). Application of Potential-pH Diagrams to the Electrodeposition of Metal Oxides. Journal of The Surface Finishing Society of Japan, 64(2), 94–98. https://doi.org/10.4139/sfj.64.94
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