Abstract
クマノミ類が共生するイソギンチャクは, “宿主イソギンチャク”と呼ばれ,クマノミ類にとって の隠れ場所として重要な役割を果たしている。一方, “宿主イソギンチャク”にとってのクマノミ類の役 割については,これまで曖昧な点が多かった。本稿では,まず,褐虫藻に注目した最近の研究をまとめ, クマノミ類との共生がイソギンチャクにもたらす利益について明確にした。このことにより,あるイソギ ンチャク1個体の着底後初期の生存と成長には,クマノミ類との潜在的共生種数が多いほど有利であろう と推察された。 “宿主イソギンチャク”には,定着したクマノミ類のほとんど全てが繁殖場所として利用 する種(4種)のほかに,定着したクマノミ類の中の特定の種のみが繁殖に利用する種(2種) ,ほとんど 全てが繁殖場所には利用しない種(4種)があり,クマノミ類にとってのイソギンチャクの価値に格差が 存在する。イソギンチャク1種にとってのクマノミ類の潜在的共生種数はそこで繁殖が確認されたクマノ ミ類の種数と極めて強く相関しており,クマノミ類が価値の高いイソギンチャクを選択的に利用する傾向 が示唆される。 “宿主イソギンチャク”は,クマノミ類との関係性,特に双方にとっての価値の高低に注 目すると4タイプに類型化されるが,タイプ間で観察例数に大きな違いが見られ,地理的分布が重複する 221例の組合せのうち,実在するのは37.1%(82例)であった。これまでの研究を概観することにより, 実在する組合せには,1) “宿主イソギンチャク”とクマノミ類の地理的分布の重複のほかに,2)生息場 所の一致,3)クマノミ類による宿主選択性,さらに,4)宿主をめぐるクマノミ類の種間競争が大きく影 響していることが理解できる。クマノミ類よりも寿命が長く,浮遊幼生期間も長い“宿主イソギンチャク” の地理的分布には,暖流の影響が大きいことが文献情報の分析から明らかになった。 “宿主イソギンチャ ク”の分類は日本では混乱しているが,多少の問題点があったとしても,世界で幅広く用いられている分 類に従うことにより,日本近海で報告されているイソギンチャクとクマノミ類の分布や生態,関係性につ いて,他海域で得られた知見との比較分析が可能となる。 キーワード インド-太平洋,褐虫藻,種間競争,宿主
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HATTORI, A. (2011). Diversity of symbiotic relationship between host sea anemone and anemonefish: an ecological review of their distributions and combinations. Journal of the Japanese Coral Reef Society, 13, 1–27. https://doi.org/10.3755/jcrs.13.1
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