Abstract
はじめに 現在、DNA 配列の解読技術の進展により、各種の 作物においてゲノムに関する詳細な情報が急速かつ大 規模に蓄積されており、SNP などの大量のゲノム上 の変異が明らかにされている。膨大な数の SNP に対 する遺伝子型判定を低コストで実現する技術や機器も 開発されており、作物の品種・個体における SNP の 遺伝子型情報の効率的な収集が可能となっている。こ のような状況の下で、ゲノムワイドなマーカー情報を 活用した効率的な選抜方法であるゲノミックセレク ション(以下 GS と略す)に対して、作物育種への適 用を目指した研究が盛んに行われている。GS におい ては、まず表現型データとゲノムワイドに配置された SNP などのマーカーの遺伝子型データを持つ個体・ 品種群(トレーニング集団)を用いてマーカー遺伝子 型から育種価を予測するためのモデル(育種価予測モ デル)を構築し、次に構築されたモデルを用いて育種 対象となる個体・系統のマーカー遺伝子型データから 育種価を予測し、その予測された育種価(Genomic estimated breeding value、以下 GEBV と略す)にもとづ いて個体選抜が行われる(Meuwissen ら 2001) 。GS はもともとは家畜育種を念頭に提案された選抜手法で あり、乳牛においてすでに GS を用いた育種システム が運用されており(Dalton 2009) 、他の家畜でも実用 化が進んでいる(Knol ら 2016; Wolc ら 2016) 。 GS による選抜では選抜対象となる個体・系統の表 現型データを測定する必要がなく、作物育種において も幼苗から抽出された DNA による個体選抜が可能な ため、育種サイクルを大幅に短縮した効率的な形質改 良の実現が期待される。しかしながら、作物育種にお いては、多くの作物種について作物種ごとに固有の育 種方法が確立されており、GS の実用化のためには GS を既存の育種方法にどのように組み込むかが課題とな る。また、作物育種においては、通常、栽培地域や栽 培環境に適した品種の作出が目的となるため、環境応 答性を考慮した育種が重要となる。そのために、遺伝 的能力(育種価)だけでなく、環境応答をつかさどる 遺 伝 子 型 と 環 境 と の 交 互 作 用(Genotype by Environment Interaction、以下 GxE と記す)についても 評価する必要がある。したがって、GS の予測モデル において育種価だけでなく GxE も取り込んで予測を 行うことにより、環境に応じた品種の作出に GS を利 用することも可能である。作物育種への GS の応用に 関連して、GxE を予測するための予測モデルの研究 もこれまでに数多く報告されている (例えば、Burgueño ら
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HAYASHI, T. (2018). Application of genomic selection to crop breeding. The Journal of Animal Genetics, 46(2), 73–86. https://doi.org/10.5924/abgri.46.73
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